Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー』(エマニュエル・ローラン)



『ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールトリュフォー』 DEUX DE LA VAGUE

 監督/エマニュエル・ローラン
 脚本/アントワーヌ・ドゥ・ベック
 出演/イジルド・ル・ベスコ、フランソワ・トリュフォージャン=リュック・ゴダールジャン=ピエール・レオ
  (2010年・97分・フランス) 


 “ヌーヴェルヴァーグ”の二大人気監督フランソワ・トリュフォージャン=リュック・ゴダールの友情と決別を描くドキュメンタリー『ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールトリュフォー。これは見るしかあるまいと、トリュフォー・ファンの妻と見に行って来ました。仙台のミニシアター、仙台フォーラムにて。


 『大人は判ってくれない』がカンヌ国際映画祭で上映されセンセーションを巻き起こした1959年をヌーヴェル・ヴァーグの始まりと捉え、それから50周年になるのを記念して製作されたドキュメンタリー。トリュフォーゴダール、そして2人の間で揺れ動いた俳優ジャン=ピエール・レオーの運命を描き、その後の映画史に多大な影響を与えたムーヴメント“ヌーヴェルヴァーグ”を振り返ろうという企画だ。そういった意図自体は間違っていないと思うけれど・・・。


 果たして現在の若い映画ファン相手に“ヌーヴェルヴァーグ”なんて言ってどれだけ惹き付けるものがあるのか分からないが、ちょっとでも興味を持って本作を見に行った若い人に対しては極めて不親切というか説明不足だと思う。逆に俺らみたいな長年のファンにとってみれば、散々あちこちで見たり聞いたりしたネタばかりで新鮮味の無い内容だった。1968年の五月革命で決別して以降、映画愛を選んだトリュフォー、政治化したゴダールを対比して描くのはいいけれど、まるでゴダールが嫌な悪役みたいな描かれ方なのはどうかなあと思うぞ。トリュフォーの早過ぎる死、そしてトリュフォー亡き今も現役で新作を発表し続ける孤高のゴダール、俳優業を続けるレオーについてちゃんと言及されていないのは片手落ちもいいところだと思う。突っ込み不足だよマジで。期待して見に行っただけに失望感が大きくて、妻と「期待外れだった」と言い合いながら帰って来たのであった。


 勿論、貴重な映像を見れたのは嬉しかった。動くトリュフォーゴダール、アンリ・ラングロア事件や五月革命のデモに参加した映画監督たち(ニコラス・レイの姿も)、リヴェットの『修道女』など・・・。それだけに取材不足というか突っ込み不足というか、ドキュメンタリー映画として構成が粗雑なのが残念であった。これなら山田宏一先生の名著『友よ映画よ』を読み返した方が良かったなあ。