Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ゲゲゲの女房』O.S.T.(鈴木慶一)



 映画『ゲゲゲの女房』のオリジナル・サウンドトラック。音楽はムーンライダーズ鈴木慶一氏。小島麻由美さんをゲスト・ヴォーカルに迎えたテーマ曲『ゲゲゲの女房のうた』他、全27曲を収録している。慶一氏のサントラ仕事としては、『アウトレイジ』の濃厚さに比べると随分軽いタッチのもの。本編でもそんなに沢山は使われていなかったなあ。映像にそっと寄り添うような音楽でいい感じだったと思うけど。


 劇中、しげる宮藤官九郎)がレコードを聴いている場面でプレーヤーから流れているのが、M-2「Strange Phonesheet Music」。画面で見ると何やら怪しげな民俗音楽に聴こえた。こうしてサントラで聴き直してみると明らかにテクノ(笑)。映画で描かれた時代にはあり得ないはずのエレクトロニカ音楽だ。思うに、『ゲゲゲの女房』では「しげるの異才ぶりをポップに描く」「貧乏生活をポップに描く」なんて方向性もアリだったんじゃないかと。実際、プレーヤーの音楽とか漫画がアニメになって動き出す場面などにその萌芽が見られる。もしそうならば慶一氏の音楽はもっと重要な役割を果たしただろうなあと思う。


 エンディングテーマ『ゲゲゲの女房のうた』は既発のシングルよりも音数の少ないヴァージョンで、映像から浮くのではないかという心配は杞憂に終わった。
(『ゲゲゲの女房のうた』について: http://cul-de-sac.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/a-ge-ge-version.html )


 慶一氏は音楽担当の他、俳優として2シーンほど出演していた。貸本屋の店主役で、「暗いんだよ」という印象的な台詞あり。タナダユキの『赤い文化住宅の初子』で演じたラーメン屋の店主と同様にむっつりした嫌な感じの役だった。レトロな衣装が似合っていたなあ。


 いっそのこと、ムーンライダーズのメンバー全員に妖怪の役で出演して欲しかった。怪しげな楽器を奏でたりして。そうすればさぞ映画が活気付いたことだろう。



ゲゲゲの女房のうた

ゲゲゲの女房のうた