Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(ブラッド・バード)

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
 MISSION: IMPOSSIBLE - GHOST PROTOCOL


 監督/ブラッド・バード
 脚本/ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック
 撮影/ロバート・エルスウィット
 音楽/マイケル・ジアッキノ
 出演/トム・クルーズジェレミー・レナーサイモン・ペッグポーラ・パットンミカエル・ニクヴィスト
  (2011年・132分・アメリカ)



 トム・クルーズ主演の人気シリーズ第4弾ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル。昨年暮れ(12/30)に仙台チネ・ラヴィータにて鑑賞。


 クレムリン爆破容疑の濡れ衣を着せられたイーサン・ハント(トム・クルーズ)とそのチーム(ジェレミー・レナーサイモン・ペッグポーラ・パットン)が、I.M.F.(米国極秘諜報機関)のバックアップを失いながら、事件の黒幕“コバルト”を追い詰めていく・・・というお話。


 今回はイーサン・ハントだけでなく、チーム・メンバーそれぞれの活躍を見せるお話になっている。個々のキャラクターを生かした展開にはとても好感が持てた。個人的には、3作目に出ていたベンジーサイモン・ペッグ)の再登場が嬉しかったなあ。単にコメディ・リリーフに終わらず、アクションも披露するなど大活躍。


 シリーズのプロデューサーも兼ねるトム・クルーズは、毎回違う監督を起用して活性化を図っている。ブライアン・デ・パルマジョン・ウー、J・J・エイブラムスときて、今回は『アイアン・ジャイアント』『Mr.インクレディブル』等で知られるブラッド・バード監督を起用。実写のアクション映画にアニメーション監督とは大胆なチョイスだが、これが大成功! お話は相当大雑把な感じだけど、秘密兵器や潜入のサスペンスといったスパイ映画ならではの見せ場を随所に盛り込みながら、緩急自在なテンポの良い演出で最後まで飽きさせない。


 唐突だが、自分には苦手なものが三つある。それは「高い所」と「狭い所」、そして「ゴ○○リ」だ。現実にはもちろんのこと、映像で見るのも怖くて仕方がない。「高い所」については宮崎アニメでも身がすくむくらい苦手だし、「ゴ○○リ」についてはロメロの『クリープ・ショー』やギレルモ・デル・トロの『ミミック』を見た時には死にそうになった。もしも「大量発生したゴ○○リとともに、宙吊りになった高層ビルのエレベーターに閉じ込められる」なんて映画があったら最恐だ。


 今回の『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』では、「高い所」が映画史上最高レベルのしつこさで描写されている。主人公なんだからイーサン・ハントが墜落する訳ないと分かっているのに、映画館の座席で何度も落ち着きなくモゾモゾしてしまった。さすがアニメ監督らしく、ブラッド・バードは空間演出が抜群に上手い。特に高さの演出には独特のこだわりが感じられた。2作目でジョン・ウー「回転」の演出で個性を見せていたように、今回は「高さ」の演出で独自の面白さを生み出していると思った。怖かったけど。


 アクション演出で言えば、何かに飛び移る時にかならずガツンと頭ぶつけるのが良かったなあ。ドバイのホテルで窓外から室内に帰還する荒唐無稽な場面も、あの窓枠ガツン!があるから納得出来たのだと思う。刑務所での乱闘、砂嵐の中でのカーチェイス、立体駐車場でのスーツケース争奪戦など、工夫を凝らしたアクションの見せ場が楽しかった。


 キャラクターの面白さ、アクションの切れ味、世界を股に掛けたお話のスケール感等々、『ミッション:インポッシブル』シリーズには、今やスパイ映画の本家「007」シリーズを凌ぐ勢いが感じられる。ようやく製作にゴー・サインが出たらしいダニエル・クレイグジェームズ・ボンドの新作がこれにどう対抗するのか楽しみだ。