Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『死の追跡』(バリー・シアー)

【映画パンフ】死の追跡 リチャード・ハリス ロッド・テーラー

【映画パンフ】死の追跡 リチャード・ハリス ロッド・テーラー


『死の追跡』 THE DEADLY TRACKERS


 監督/バリー・シアー
 原案/サミュエル・フラー
 脚本/ルーカス・ヘラー
 撮影/ガブリエル・トーレス
 音楽/フレッド・スタイナー、ジェリー・フィールディング
 出演/リチャード・ハリス、ロッド・テイラー、アル・レッティエリ、ネヴィル・ブランド、イゼラ・ヴェガ
 (1973年・103分・アメリカ)


 TSUTAYAの名画発掘コーナーに見慣れぬ西部劇が。タイトルは『死の追跡』。監督は『110番街交差点』のバリー・シアー、主演はリチャード・ハリス。気になったのでチェックしてみた。


 妻子をならず者一味に殺された保安官が復讐の鬼となり、国境を越えて追跡を続けるが・・・というお話。ストーリーそのものには何の新鮮味もないけれど、キャラクター描写の面白さと、ちょっと捻ったシチュエーション(主人公が一時的に視力を失ったり、クライマックスの舞台が修道院だったり)で最後まで飽きさせない。女子供構わず血祭りに上げるバイオレンス描写は、いかにもマカロニウエスタン以降(本作は1973年製作)という強烈さ。「名画」と呼ぶのは違う気もするけど、全編の刺々しい雰囲気、やるせない幕切れは印象に残った。


 主演は『ジャガー・ノート』『カサンドラ・クロス』等、猛禽類じみた顔つきと特徴的なヘアスタイルで70年代映画ファンにはお馴染みのリチャード・ハリス。冒頭のクールな風情から、復讐の鬼と化した後半の変貌ぶり、復讐を果たしたラストの何とも言えぬ表情まで、ハリスの熱演が大きな見所になっている。


 共演者がまた濃い。ならず者の首領はロッド・テイラー、その仲間に『マッドボンバー』『悪魔の沼』等のネヴィル・ブランド。ブランドは片手が義手なのだが、鉤爪ならぬハンマーを装着している。ブランドは父親が鉄道で轢死し、自らも片手を失ったという設定で、その線路を切り出した鉄の塊を腕に装着しているのだ。メキシコの保安官は『ゲッタウェイ』『マジェスティック』等の悪役で知られる特濃顔アル・レッティエリ。ならず者一味の首領の愛人が『ガルシアの首』のイゼラ・ヴェガだったりして、濃すぎる。ちなみに主人公が馬でメキシコ領を行く場面に流れる音楽も何だか『ガルシアの首』っぽいような。


 エンディングのクレジットで驚いたことに、本作の原案はサミュエル・フラーであった。本来フラーが監督する予定だったが、諸事情で頓挫したのだという。なるほど、立場の違う登場人物たちがそれぞれの価値観で激しく対立する様子や、登場人物たちの妙な頑固さはフラー節なのかもしれない。