Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『キラー・キッド』(レオポルド・サヴォーナ)

キラー・キッド [DVD]

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『キラー・キッド』 KILLER KID


 監督/レオポルド・サヴォーナ
 脚本/レオポルド・サヴォーナ、セルジオ・ガローネ
 撮影/サンドロ・マンコーリ
 音楽/ベルト・ピサーノ
 出演/アンソニー・ステファン、フェルナンド・サンチョ、リズ・バレット、ジョヴァンニ・チアンフリグリア
 (1967年・102分・イタリア)


 日本劇場未公開(TV放映のみ)のマカロニウエスタン鑑賞その1『キラー・キッド』。ヴァモス・ア・マタール商會からリリースされた「マカロニ・ウェスタン マニアックス 特命篇」の一本。主演は『荒野のプロ・ファイター』『地獄から来たプロガンマン』のアンソニー・ステファン。フランコ・ネロジュリアーノ・ジェンマ、テレンス・ヒルらとともにマカロニブームを牽引した当時の人気スターである。イーストウッドリー・ヴァン・クリーフらハリウッドからの出稼ぎ組と違い、実は本名をアントニオ・デ・テッフェという生粋のイタリア人だ。そのルックスにはどことなくイーストウッドヘンリー・フォンダの面影がある。監督はステファン主演の『皆殺しのガンファイター』を撮ったレオポルド・サヴォーナ。


 メキシコ国境にほど近い刑務所から、「キラー・キッド」とあだ名されるガンマン(アンソニー・ステファン)が脱走した。国境を越えメキシコに逃れたキッドは、エル・サント(ハワード・ネルソン・ルビアン)率いる革命軍に入り込む。キッドはリーダー格のビラール(フェルナンド・サンチョ)と対立しながらも、次第にエル・サントの信用を勝ち取ってゆくが・・・。


 主人公である凄腕のガンマン「キラー・キッド」が大活躍!というお話ではなくて、ちょっと捻った脚本になっている。ネタばらしになるけれど、キッドの正体はアメリカ軍将校で、武器の密輸を阻止しようという目的があったのだ。正体がばれて一度は革命軍を離れたキッドが再び戦いに参加する辺りは、パターン通りとはいえ盛り上がる。同趣向のセルジオ・コルブッチ監督作『豹/ジャガー』『ガンマン大連合』に比べると、演出が軽量過ぎて物足りなさはあるけれど、まあまあ面白かった。


 主人公と対立する革命軍のメンバー、ビラールを演じるのは、脂ぎった髪と髭と太目の体型でマカロニ・ファンにはお馴染みのフェルナンド・サンチョ。サンチョと言えば毎度山賊の首領役で悪役専門みたいなイメージがあるけれど、本作では主人公と張り合う堂々の準主役クラス。惚れた女と革命に殉じる熱い男の役だ。マカロニ好きとしてはちょっと嬉しかった。


 後、革命家エル・サントを演じるハワード・ネルソン・ルビアンの髭面がどうもロバート・アルトマンに見えてしょうがなかった。どうでもいい話だけど。