- 出版社/メーカー: ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント
- 発売日: 2007/09/19
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『ライフ・アクアティック』 THE LIFE AQUATIC WITH STEVE ZISSOU
監督/ウェス・アンダーソン
脚本/ウェス・アンダーソン、ノア・ボーンバック
撮影/ロバート・D・イェーマン
アニメーション/ヘンリー・セリック
音楽/マーク・マザースボウ
出演/ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー
(2005年・118分・アメリカ)
ウェス・アンダーソン監督の近作『ライフ・アクアティック』見る。実は二度目のトライである。一度目に見ようとした時には、あまりにスカした雰囲気に耐えられず中座してしまったのだった。それを何で見直そうと思ったかと言うと、キャストの中にバッド・コートの名を見つけたからだ。バッド・コート!そう、アルトマンの『BIRD★SIT』、ハル・アシュビーの『ハロルドとモード』の、あのバッド・コートだ。
著名な海洋探検家・海洋記録映画監督のスティーヴ・ズィスー(ビル・マーレィ)は、チーム古参のエステバン(シーモア・カッセル)を「ジャガーザメ」に喰い殺されてしまった。エステバンの仇討ちの為、撮影隊とともに探査船ベラフォンテ号で新たな航海へと旅立つが・・・。
ユーモラスな人物造型、スタイリッシュな映像、先読みの出来ないシナリオ、個性的な音楽の使い方(今回は全編デヴィッド・ボウイのボサノヴァ・アレンジのカヴァーという変化球)、とこれまでのアンダーソン作品と共通したテイストなのだけれど、本作にはどこか馴染めないものを感じた。改めて最後まで見通してみて、良く出来た映画だなあとは思うけれど、いささか気取り過ぎが鼻につく映画であった。個人的にはもっとざっくりした映画のほうが好ましいと思う。
本作は探検家スティーヴ・ズィスーとその仲間たちの冒険を描くコメディ・・・かと思うとそうでもない。コミカルな演出が施されてはいるけれど、基本的には流血や死人もありのシリアスな物語である。登場する海洋生物が名手ヘンリー・セリックによるストップモーション・アニメで表現されていたり、探査船の様子がいかにも人工的な雰囲気だったり、本作がリアル志向ではなくファンタジー寄りの映画であることは理解出来る。ならば海の男の心意気も絵空事で良いのかと言えばそんなことは無いはずで、主人公の捉えどころの無さ(ビル・マーレィのいつものやる気なさそうな演技、突発的な行動)や、クライマックスにおける「ジャガーザメ」と邂逅する場面の演出には、そういう映画と分かっているつもりでも「ハズされた」感を強く感じてしまった。
出演はビル・マーレイを始め、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、マイケル・ガンボン、シーモア・カッセルら個性派揃い。強面デフォーのいじらしい演技には笑わせてもらった。お目当てのバッド・コートはズィズーの撮影隊に同行する保険会社のお目付け役で、海賊の人質にされたり酷い目に遭う役であった。すっかり太って禿げ上がったおじさんになってるけれど、人懐っこいキャラクターは健在で嬉しかった。バッド・コートを見れただけでも本作を見た価値はあった。っていうか感激して泣きそうだったよ、オレは。
本作で好きだったのは、ズィズーの仲間たちが一人一人登場するエンディングだ。あのエンディングで映画の印象は10倍くらい良くなったかも。