- 作者: ジェフ・ローブ,ティム・セイル,ヤスダシゲル
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2009/03/30
- メディア: 大型本
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友人のSir J.J.お薦めのコミック『バットマン:ロング・ハロウィーン』読んでみた。熱狂的なファンを持つ映画『ダークナイト』の原点となった作品なのだという。巻頭にはデビッド・S・ゴイヤーとクリストファー・ノーランの対談が収録されており、本書の重要性が熱く語られている。アメコミにはあまり馴染みが無いんで、どんなものかと興味津々で読み始めた。
ハロウィーンの夜、犯罪都市ゴッサムシティを牛耳る大物ギャング・ローマンの甥ジョニーが何者かに殺害された。その事件を皮切りとして祝祭日の度に殺人事件が発生し、ゴッサムシティの人々は連続殺人犯を「ホリディ」と名付け恐れた。バットマンは市警警部ゴードン、地方検事デントと協力し「ホリディ」を追い掛けるが・・・。
本書はバットマン対悪漢のアクションがメインではなくて、謎の連続殺人鬼「ホリディ」の正体を追うミステリー仕立てとなっている。併せて、汚れた街ゴッサムシティの浄化を目指す三人の男(バットマン、市警警部ゴードン、地方検事デント)がそれぞれの立場で己の信じる正義を貫こうとする闘いが描かれる。ストーリー展開や画面構成(要所に台詞無しのシークエンスが挿入されるのが格好良い)など、完全に大人向けの仕上がりだ。頑固な登場人物たちがぶつかり合う様子は、どことなくフリッツ・ラングの『THE BIG HEAT/復讐は俺に任せろ』を思い出した。女性キャラクターが次第に存在感を増してゆくところも似ているかも。
リアル路線というだけでなく、ローマン一味や個性的な悪役たちが縦横に活躍する辺りにはコミックならではの楽しさも充分に味わえる。特にクライマックスでトゥー・フェイス、キャットウーマン、ジョーカーら映画でも御馴染みの名物キャラクターたちが一同に会する場面など、(シリーズに特に思い入れの無いオレでも)盛り上がった。なるほど名作と呼ばれるだけのことはあるなあと納得した次第。
先ごろ、アメリカ・コロラド州の映画館で無差別乱射事件が発生した。上映していたのはクリストファー・ノーラン監督によるシリーズ最新作『ダークナイト・ライジング』。逮捕された犯人はジョーカーを名乗る24歳の若者で、自宅には爆発物が仕掛けられていたという。真似する対象がヒーローのバットマンではなくて悪役のジョーカー、というところにこのシリーズの特色(特異な魅力)が滲んでいるような気がしないでもない。まあバットマンの真似したからって、(『キック・アス』の冒頭みたいに)ビルから転落死するだけかもしれないが。