Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『僕達急行 A列車で行こう』(森田芳光) 

僕達急行 A列車で行こう [DVD]

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『僕達急行 A列車で行こう


 監督・脚本/森田芳光
 撮影/沖村志宏
 音楽/大島ミチル
 出演/松山ケンイチ瑛太貫地谷しほりピエール瀧笹野高史伊武雅刀西岡徳馬松坂慶子
 (2012年・117分・日本)



 劇場で見逃していた森田芳光監督の遺作『僕達急行 A列車で行こう(2012年)見る。出張先のホテルのCATVにて。


 鉄道ファンの青年(松山ケンイチ瑛太)の友情を描くコメディで、初期作品に回帰したかのような作風(軽妙な人物スケッチとテンポの良い映像、クド過ぎない程度のウンチク)が何とも懐かしくて楽しかった。脇役のピエール瀧笹野高史貫地谷しほりらがいい味を出している。常連伊藤克信のワンポイント出演も嬉しい。


 とても楽しい映画であったが、「趣味を同じくする青年の友情」と呼ぶには主人公2人の仲が良すぎるというか、どこか演出の塩梅を間違えてる気もしたなあ。2人が向かい合って仲良くゆで卵を食べる場面が度々出てきたりしてちょっとキモチ悪かった。


 今から20年くらい前(学生時代の話)、友人のTommy氏が製作した『うで卵』という自主映画があった。ゲイカップルのすれ違いを描くお話で、その映画にも主人公たちがゆで卵を分け合って食べる場面があった。ゆで卵のつるりとした表面とそれを頬張る男の口元が性交を暗示させる仕掛けになっていた。『僕達急行 A列車で行こう』で主人公たちが仲良くゆで卵を食べる場面を見て、ふと『うで卵』の件の場面を思い出してしまった。すると、どうしても「A列車」の「A」ってもしや「A感覚」の、みたいな疑惑が・・・。松山ケンイチ瑛太ナチュラルな、というよりもナヨっとした演技が一層その感を強めている。気にし過ぎかなあ。