Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『GODZILLA ゴジラ』(ギャレス・エドワーズ)

 久々に日本の新作ゴジラが作られるとの情報、監督は何とアノ人なのですね。他の名前の怪獣ではなくて、何故に「ゴジラ」なのかという点において、ちゃんと納得できるような映画になるといいなあと期待しています。あんまり理屈っぽい怪獣映画もイヤだけど、何と言っても「ゴジラ」ですよ、日本映画の宝ですよ、怪獣映画の宝ですよ。大事に扱って欲しいなあと思います。


 それはさておき。昨年公開されたハリウッド版の新作ゴジラ映画『GODZILLA ゴジラ』について。日本のオリジナル版、エメリッヒ版は全く無かったことにして、1から新たに語られる『ゴジラ』が展開するのだろうと思っていました。すなわち新シリーズ1作目というか、ゴジラそのものがちゃんと主役に据えられているのだろうと。そうしたら、驚いたことにお話のメインとなるのは2体の放射能怪獣でありました。都市を蹂躙する放射能怪獣を、守護神のごとく登場するゴジラが退治するという、まるっきり『ゴジラ対○○』的な作劇で、これには意表を突かれました。しかも2体の放射能怪獣のデザインが非常に気色悪くて、怪獣プロレスも見ていて楽しくないのでありました。(その点『パシフィック・リム』は清々しかったかも)


 登場人物たちにこれっぽっちも面白味がないとか、核(放射能)描写は相変わらずずさん過ぎるだろとか、色々文句がある中で、最大の問題点はやはり“ゴジラ”とは何か(何の象徴なのか)が非常に曖昧なことだろうと思いました。個人的には、人智の及ばない最大の「自然災害」として描くのではないかと予想していました。原発事故の場面、津波の場面が出てくるの偶然ではなく、作り手にもそんな意識はあったのではないかと推測されますが、いかんせん中途半端過ぎる印象です。


 監督が低予算の怪獣映画(『モンスターズ/地球外生命体』)から抜擢されただけあって、巨大感の描写はなかなか上手いと思いました。高低差を生かした鉄橋の場面が特に印象に残りました。終盤、落下傘部隊が降下する場面のキメのロングショットも良い。こちらが予想していたものとは色んな面で違っていたので不満が残ってしまいましたが、「ゴジラ」とか言わなければ怪獣映画としてそれなりに楽しめたかもしれません。


(『GODZILLA ゴジラ』 GODZILLA 監督/ギャレス・エドワーズ 脚本/マックス・ボレンスタイン 撮影/シーマス・マッガーヴェイ 音楽/アレクサンドル・デスプラ 出演/アーロン・テイラー=ジョンソン渡辺謙エリザベス・オルセンジュリエット・ビノシュサリー・ホーキンス、カーソン・ボルデ 2014年 123分 アメリカ)