Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS』(伊藤計劃)

 夭逝の天才SF作家・伊藤計劃。未読だった最後の一冊『METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS』(2008年)。氏が愛好していたゲーム「メタルギアソリッド」シリーズのノベライズ作品で、その熱い思い入れが伝わってきます。個人的にはゲームに対し何の思い入れも無いので(友人宅で拝見した程度の知識しかない)、前半部分は思い入れたっぷりな文章にいささか鬱陶しさを感じたというのが正直なところ。物語が(というより多彩な登場人物たちがザワザワと動き出す)中盤以降は気にならず読み進めることが出来ました。活劇場面の描写も上手い。燃えます。


 他の作品を読んで、氏が「物語を誰がどのようにして語るのか」という点に細心の注意を払っていたという事を感じましたが、本作など正にその一点に作家性の全てを託したような印象すらあります。『虐殺器官』『ハーモニー』に飛翔するワンステップとして、このノベライズという作業が欠くことのできないものだったのだろうと思います。


 どうやら『虐殺器官』『ハーモニー』のアニメ映画化が進行しているようで、本屋に並ぶ文庫の表紙もいつの間にか一新されていました。期待(半分不安半分)して待ちたいと思います。シリー・ウォーク・デバイスとかどうすんのよ。ジョン・クリーズが存命の間に、モーション・キャプチャーで撮影してリアル・シリー・ウォークを再現するってのはどうですかね。アニメ映画として相性良さそうなのは『ハーモニー』の方だけど、あんまり絵柄が萌えキャラだとヤだなあ。


METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS

METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS