Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ジャッキー・コーガン』(アンドリュー・ドミニク)

 チンピラ二人組が賭場を襲撃、組織の金を強奪して逃走した。組織の依頼を受けた殺し屋ジャッキー・コーガンブラッド・ピット)が事件を解決するべく動き出す・・・という粗筋だけ聞くと普通のギャング映画のようですが、これが猛烈に変な映画でありました。


 派手な音楽は流れずBGMはほとんど状況音だけ。超スローモーションで撮影された暴力シーンは、動物の生態を捉えたネイチャー番組のよう。シーンの合間にはTVから政治家の演説が延々と流れる。ギャングや殺し屋の長台詞と政治家の演説からは、殺人も経済活動の一環、のようなメッセージが伺える(ような気がする)。「スタイリッシュな犯罪映画」といえば聞こえはいいけれど、そう言ってイメージするメルヴィルの『サムライ』なんかとは全く似ていない。かと言ってタランティーノ以降の饒舌なギャング映画でもない。何とも妙な映画だったなあ。ブラピのファンとかどう思ったんだろうか。脇役にはリチャード・ジェンキンスジェームズ・ガンドルフィーニレイ・リオッタサム・シェパードらイイ顔が揃っていました。


(『ジャッキー・コーガン』 KILLING THEM SOFTLY 監督・脚本/アンドリュー・ドミニク 撮影/グリーグ・フレイザー 出演/ブラッド・ピットリチャード・ジェンキンスジェームズ・ガンドルフィーニレイ・リオッタサム・シェパード 2012年 97分 アメリカ)