Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『吸血鬼ドラキュラ』(テレンス・フィッシャー) 

 先月7日に亡くなったクリストファー・リー追悼として、英国ハマー・フィルムのホラー・クラシック『吸血鬼ドラキュラ』鑑賞。超有名な作品ですが、恥ずかしながら今回が初見でした。リーの主演作といえば『ウィッカーマン』『顔のない殺人鬼』をはじめ、ハマー・ホラーだって色々見てますが、何故か肝心のこれを見ていなかったんです。スミマセンでした。


 英国ハマー・フィルムのシリーズ1作目ということもあり、お話のスケールが妙に小さいというか、予想よりも随分とこじんまりした映画でした。ユーロ・ホラーのムーディーな魅力も味わえますが、テレンス・フィッシャーはホラーというよりアクション映画のようなスピーディーな演出で見せます。棺に眠る吸血鬼に杭を打ち込む場面、ラストで朝日を浴びてドラキュラが崩れ落ちる場面など、ショック描写もお見事。ホラー映画史上屈指の名作との評価にも納得です。これまで見逃していてスミマセンでした。


 ドラキュラ伯爵役のクリストファー・リー、対する吸血鬼ハンターのヴァン・ヘルシング役のピーター・カッシング、両者とも他は考えられないくらいのハマり役です。両者の醸し出す風格が作品の格を何ランクも押し上げているようでした。長身で美声のリーが演じるドラキュラ伯爵は、態度は紳士然としていますが、どこか人間離れしているというか、意思疎通が不可能な違う生き物のような怖さを感じさせます。本性を露にし牙をむき出した顔は目に焼きついて離れませんね。脇役には、後年リー同様にティム・バートン作品常連となるマイケル・ガフも出演してます。


 クリストファー・リーは本作を筆頭に、数々の怪奇映画で一時代を築いた大スターです。マニアックなホラー映画の世界だけではありません。007シリーズ(『007 黄金銃を持つ男』)、近年では『ロード・オブ・ザ・リング』や『スター・ウォーズ』シリーズ、晩年はティム・バートン作品で世界中に知られる超メジャーな俳優であります。90歳を超えても映画出演を続け、出演作は270本以上になるそうな。享年93歳。代表作を見逃しててスミマセンでした!


(『吸血鬼ドラキュラ』Dracula 監督/テレンス・フィッシャー 脚本/ジミー・サングスター 原作/ブラム・ストーカー 撮影/ジャック・アッシャー 音楽/ジェームズ・バーナード 出演/ピーター・カッシングクリストファー・リー、マイケル・ガフ、メリッサ・ストリブリング、ジョン・ヴァン・アイゼン 1958年 82分 イギリス)


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