Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八)

 やっと見ました『桐島、部活やめるってよ』。世評の高さと信頼できる友人からのプッシュもあってずっと気にはなっていたのだけれど、やっぱりですね、このタイトルがどうにも引っかかって見る気が起きなかったのですよ。どうしてもちゃんと覚えることが出来ないのだ。『部活やめるらしいよ』だっけ、『部活やめるみたい』だっけ、『部活やめるの巻』だっけ(いやそれは絶対違う)、そうか『桐島、部活やめるってよ』かと思い出し、今度は『桐島、バイトやめるってよ』かと間違えたり・・・。このタイトルらしからぬタイトルが「今風」(ゼロ年代風と言うべきか)だよなあと思いきや、実際見てみると、自分が高校生だった○十年前とほとんど何も変わらぬ青春の悶々を(極めて洗練されたタッチで)描いた非常に好感の持てる等身大の映画なのでした。自分が高校生だった当事「スクールカースト」なんて言葉は無かったけれど。変わんないですよね、基本。


 バレー部のエースで学園のスターである桐島が突然退部したというニュースに、校内が騒然となります。桐島は姿をくらまし、残された生徒たちの間に動揺が拡がっていきますが・・・。

 
 不在の「桐島」君を巡る群像劇の中で、やっぱり目が行くのは映研の神木君でした。自分らも8ミリカメラ抱えて校舎の裏でコマ撮りとかしてたクチなんで。あんなにオドオドしてなくて、若くて無知なだけにもっと堂々としてたと思うけど。神木君の(痛々しい)一挙一動には、心の中で何度も「頑張れ、頑張れ」とつぶやいていました。「ジョージ・A・ロメロ。『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』。そんくらい見とけ!」ってのは良かったですね。運動部の諸君には伝わってなかったかもな。最後の神木君と東出君の対話には泣きそうでしたよ。


 ひとつの出来事を焦点を当てる人物を少しずつずらしながら何度か語り直していきます。ガス・ヴァン・サントが『エレファント』で見せたデリケートなタッチを思い出しました。いい映画だと思います。原作(朝井リョウ)は第22回小説すばる新人賞受賞作だそうです。原作にもロメロ出てくるのかなあ。今度読んでみようかな。



(『桐島、部活やめるってよ』 監督/吉田大八 脚本/喜安浩平、吉田大八 撮影/近藤龍人 音楽/近藤達郎 出演/神木隆之介橋本愛東出昌大大後寿々花、清水くるみ、山本美月松岡茉優 2012年 103分 日本)


桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

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