Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『デイン家の呪い』(ダシール・ハメット)

 ダシール・ハメット『デイン家の呪い』The Dain Curse(1929年)読了。学生時代にハードボイルドの定番作品を読み漁った時期があって、ハメットのほとんどの長編(『血の収穫』『マルタの鷹』『ガラスの鍵』『影なき男』)、創元推理文庫から出ていた短編集も読みました。でも何故か『デイン家の呪い』だけは未読のままでありました。ハメット自身が失敗作と認めていたというのを何かで読んで、敬遠していたのだったかな。今回手にしたのは早川文庫から出ている新訳版、翻訳はハードボイルド研究の第一人者である小鷹信光氏です。


 主人公は『血の収穫』と同じコンティネンタル・オプ。なんだけど、『血の収穫』とは全く雰囲気が違います。物語もダイヤモンド盗難事件から始まって、怪しげな宗教、一族に伝わる呪い、関係者の自殺、謎の死、カークラッシュからダイナマイトによる爆破まで何とも盛りだくさんな内容。オカルト風味もあり。『血の収穫』『マルタの鷹』のストイックなタッチとは異なり、物凄くパルプっぽいというかB級臭い雰囲気です。ハメット作品の中でも「異色作」とされているのも納得。面白かったけど、後をひく印象は全く残らなかったなあ。


デイン家の呪い(新訳版)

デイン家の呪い(新訳版)