Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『北海ハイジャック』(アンドリュー・V・マクラグレン)

 アンドリュー・V・マクラグレン監督、ロジャー・ムーア主演『北海ハイジャック』(1980年)鑑賞。テレ東「午後のロードショー」で放映された日本語吹替版(ロジャー・ムーア広川太一郎アンソニー・パーキンス野沢那智)にて。その昔TV「ゴールデン洋画劇場」で見て以来、久々の再見です。


 北海の油田基地を占拠したテログループと、フォークス(ロジャー・ムーア)率いる特殊部隊の攻防戦を描くアクション映画。海洋作戦のプロと冷酷な犯人グループの駆け引きをサスペンスたっぷりに描いています。大爆発は陽動作戦の遠景のみ、クライマックスは(フォークスの作戦が成功するので)銃撃戦も起こらないまま収束します。最近の派手派手なアクション映画を見慣れていると、いかにも地味いいいな展開ですが、これが意外に悪くないのですよ。映画が脱線しなければ、これくらいの見せ場でも充分に満足感が得られるという証でしょうか。


 監督はアンドリュー・V・マクラグレン。『シェナンドー河』(1965年)、『大いなる男たち』(1969年)、『チザム』(1970年)といったジョン・ウェインジェームズ・スチュアート主演の西部劇で知られるアクション派の監督さんです。TVの吹替洋画世代としては、戦争アクション『ワイルド・ギース』 (1978年)の人ですね。マクラグレン監督の手堅い演出は、もしかして公開当時(1980年)ですら古臭く見えたかもしれません。しかし、見せ場ありきというよりは、キャラクター主体に構成されたサスペンスとアクションにはわざとらしさが無くて好印象でした。


 ロジャー・ムーア演じる主人公フォークスは女性嫌いの堅物。皆が好きになるヒーローではなくて、はっきり嫌な奴として描かれているのが面白い。女性は嫌いだけど猫は大好きというエキセントリックな人物で、ムーアは当たり役のジェームズ・ボンドとは正反対の役柄を楽しそうに演じています。


(『北海ハイジャック』FFOLKES 監督/アンドリュー・V・マクラグレン 原作・脚本/ジャック・デイヴィス 撮影/トニー・アイミ 音楽/マイケル・J・ルイス 出演/ロジャー・ムーア、ジェームズ・メイソン、アンソニー・パーキンス、マイケル・パークス、デイヴィッド・ヘディスン、ジャック・ワトソン 1980年 95分 イギリス)