パトリシア・ハイスミスの短編集『動物好きに捧げる殺人読本』ANIMAL-LOVERS BOOK OF BEASTLY MURDER(1975年)読了。動物を主人公とした短編集という企画もので、軽めのユーモア・ミステリかと思いきや、基本的には何ら変わらぬ暗黒のハイスミス節でありました。
何本か例外はあるものの、たいていは動物が虐待を受ける話か、動物と人間が対決する(そして人間側が残虐に殺される)話ばかり。コミカルな表紙のイラストとタイトルに惑わされて本書を手に取った人、ましてや動物好きの人が読んだら不快になるのは間違いないでしょう。ミステリ仕立てのいい話「空巣狙いの猿」、ユーモラスな「ゴキブリ紳士の手記」は息抜きみたいなもので、他の話はハイスミスの悪意が満ち満ちていて、ファンとして分かって読んでいても辛いものがありました。特に「ハムスター対ウェブスター」とか「鼬(いたち)のハリー」とか、どうかしてると思いますよホントに。よくこんな嫌なお話ばかり書けるなあ。「ハムスター対ウェブスター」なんかほとんど動物パニック映画みたいだし。
- 作者: パトリシアハイスミス,榊優子,中村凪子,吉野美恵子,大村美根子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1986/03
- メディア: 文庫
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