Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『サザン・コンフォート/ブラボー小隊恐怖の脱出』(ウォルター・ヒル)

 ウォルター・ヒルついでに『サザン・コンフォート/ブラボー小隊 恐怖の脱出』(1981年)について。ヒルが絶好調だった80年代前半の作品で、日本劇場未公開。TV放映時の「ブラボー小隊・恐怖の脱出」の邦題で知られていた一作で、アクション映画ファンの人気も高く、現在はソフト化もされています。先日久々に見直したのですが、実に面白かった。


 湿地帯で訓練中の州兵たちが現地民とトラブルを起こし命を狙われる・・・というお話で、ジョン・ブアマンの『脱出』をベースにしたと思しき異色の戦争映画です。州兵たちが姿無きケイジャンの密猟者たちに一人また一人と殺られていく中盤は、湿地帯の自然描写と、『ロング・ライダーズ』(1980年)に続いてのコンビ作となるライ・クーダーの音楽が緊張感を盛り上げます。


 全く女っけのない映画で、キース・キャラダインパワーズ・ブース、フレッド・ウォードピーター・コヨーテといった男臭い面々が仲間割れを繰り返しながら陰気な湿地帯を延々と這いずり回ります。回想場面などで脱線しないのが良い。州兵の人質となるケイジャンの密猟者はヒル作品常連の強面ブライオン・ジェームズ


 特に印象的なのは、キース・キャラダインパワーズ・ブースがケイジャンの村に迷い込む終盤の異様な雰囲気です。折から祭りが始まり村は陽気な音楽に包まれますが、そんな中、言葉の通じないキース・キャラダインパワーズ・ブースは密猟者たちに見つからないように身を隠しながら村を徘徊します。ああいった緊張感を引き伸ばすような演出は、その後のヒル作品では見られないものだと思います。


 本作は81年作ですが、アメリカ国内でベトナムの泥沼を再現する、という70年代アクションの残照が感じとれます。改めて見直すと、異文化に対する州兵たちの乱暴な振る舞い、ラストのヘリなど意図的に描かれていると思いました。『バレット』が気に入った若いアクション映画ファンには是非見てもらいたい一本です。


(『サザン・コンフォート/ブラボー小隊 恐怖の脱出』 SOUTHERN COMFORT 監督/ウォルター・ヒル 脚本/デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル、マイケル・ケーン 撮影/アンドリュー・ラズロ 音楽/ライ・クーダー 出演/キース・キャラダインパワーズ・ブース、フレッド・ウォードピーター・コヨーテブライオン・ジェームズ、フランクリン・シールズ、T・K・カーター 1981年 106分 アメリカ)


サザン・コンフォート?ブラボー小隊 恐怖の脱出? [DVD]

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