Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『爆発星雲の伝説』(ブライアン・W・オールディス)

 『寄港地のない船』が良かったので、オールディスの短編集『爆発星雲の伝説』Starswarm(1964年)再読してみました。


 収録作品は、『一種の技能』『心臓とエンジン』『恵まれないもの』『神様ごっこ』『断片』『爆発星雲の伝説』『ああ、わが麗しの月よ!』『讃美歌百番』の8編。ネットの感想で誰かも書いていたけれど、さぞかし強面の作品が並んでいるのだろうと身構えて読み始めたら、意外に軽めの作品が多かった。というかバラエティに富んだ作品集なのでした。


 表題作『爆発星雲の伝説』は、奇怪な生命体が闊歩する未開の惑星にワープした金融業者が、口先八寸で脱出するまでを描いた冒険活劇。コミカルで軽快な語り口はオールディスに抱いていたイメージと違っていて面白かった。しかし、何と言っても強烈なのは『讃美歌百番』です。『地球の長い午後』に相通じる終末世界のサバイバルを、人間以外を通じて描くオールディスの筆致の美しさは例えようも無い。この一編を読むだけでも手に取る価値ありです。


 ちなみに、手元にある『爆発星雲の伝説』は、仙台在住の最終日に購入した一冊です。仙台から千葉に引っ越す荷物を全て送り出し、最後に立ち寄った古本屋「火星の庭」で購入しました。「火星の庭」は小ぢんまりとしたいい店でした。また行ってみたいなあ。