Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『私はゾンビと歩いた!』(ジャック・ターナー)

私はゾンビと歩いた! THE RKO COLLECTION [Blu-ray]

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 RKOのヴァル・リュートン製作による低予算ホラーをもう1本。ジャック・ターナー監督『私はゾンビと歩いた!』(1943年)について。『映画の生体解剖-恐怖と恍惚のシネマガイド-』にて稲生平太郎氏がオールタイム・ベストに推していた1本。傑作『過去を逃れて』、『キャット・ピープル』のジャック・ターナー監督だけに期待して見始めたら、これが想像していた映画と全く違っていた。


 富豪の妻を介護するためにハイチの豪邸に招かれた看護婦が体験する不思議な事件。夜な夜な階上から聞こえるすすり泣き。暗闇を徘徊する白い影。やがて死体を生き返らせるというブードゥーの儀式に遭遇し、屋敷の秘密を知るのだったが・・・というお話。登場するゾンビはモダン・ゾンビではなくて、呪術によって操られたヴードゥー・ゾンビ。だけでなく、自殺未遂で生きる屍のようになった女性(マネキンのように美しいが全く生気が無い)もゾンビと呼べるのかも。稲生氏も書いていたが迷路のような畑を徘徊する場面の異様なムードは素晴らしい。映画の雰囲気は妙に格調高く、上映時間はわずか1時間強。扇情的な題名(原題通り)からは想像もつかない不思議な映画であった。


(『私はゾンビと歩いた!』 I WALKED WITH A ZOMBIE 監督/ジャック・ターナー 脚本/カート・シオドマク、アーデル・レイ 撮影/J・ロイ・ハント 出演/トム・コンウェイ、フランシス・ディー、ジェームズ・エリソン、エディス・バレット、クリスティン・ゴードン 1943年 68分 アメリカ)