Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『スキドゥ』(オットー・プレミンジャー)

スキドゥ(紙ジャケット仕様)

スキドゥ(紙ジャケット仕様)


 日本未公開のコメディ映画『スキドゥ』SKIDOO(1968年)鑑賞。監督は『ローラ殺人事件』(1944年)、『黄金の腕』(1955年)などで知られるオットー・プレミンジャー。サントラ盤を聴いて以来ずっと見たいと思っていた作品で、これが何とyou-tubeにフルで上がっているのであった。


 足を洗って堅気になった元殺し屋(ジャッキー・グリースン)が、組織のボスの命により、密告者(ミッキー・ルーニー)を消す為にアルカトラズ刑務所に送り込まれるが、かつての友人を殺すのを拒否して脱獄を企てる・・・というお話。粗筋だけ聞いてアクション・コメディかなと思いきや、冒頭から主人公夫婦が延々とTVのチャンネル争いを繰り広げたり、(60年代末のサンフランシスコが舞台なだけに)奥さんと娘がヒッピー集団に加わったり、ドラッグでトリップする映像が何度もしつこく描写されたり、刑務所の脱獄に至っては一切のサスペンスを欠いた間抜けぶりで、組織のボス役でグルーチョ・マルクスが胡散臭い口ひげ、葉巻、前屈みの歩き方、とマルクス兄弟時代そのまんまの役作りで登場してナンセンスにさらに拍車をかける。原語版、字幕なしの鑑賞なので細かいニュアンスは分からないとはいえ、何ともとりとめのない印象の映画であった。サントラ盤の解説によると、公開時は興行的に大失敗したとのことで、それも何となく分かる気がするなあ。


 主演は大人気のコメディアン・ミュージシャンだったというジャッキー・グリースン。今で言うならジョン・グッドマンのようなファット系で、映画ファンには『ハスラー』のミネソタ・ファッツ役といえばピンとくるだろうか。脇役の顔ぶれが面白くて、ミッキー・ルーニー、ジョン・フィリップ・ロー、ジョージ・ラフト、バージェス・メレディス、スリム・ピケンズ、囚人の一人で『007』のジョーズことリチャード・キールも出ていた。グルーチョ・マルクスはゲスト・スター扱いで、本作が最後の出演作であるという。


 映画の終盤には、ドラッグのトリップで繰り広げられるダンス場面に「ガーヴィッジ・キャン・バレー」、ヒッピー集団を率いた奥さんが歌うミュージカル調のテーマ曲、そしてEDではキャストとスタッフの名前を軽快に歌い上げる「キャスト・アンド・クルー」、とニルソンのヴォーカル曲が上手に使用されている。何とも愉快な雰囲気で、大好きなニルソンの音楽ゆえに映画の後味はとても良かった。


(『スキドゥ』 SKIDOO 監督/オットー・プレミンジャー 音楽/ハリー・ニルソン 出演/ジャッキー・グリースン、ミッキー・ルーニー、ジョン・フィリップ・ロー、ジョージ・ラフトグルーチョ・マルクス 1968年 アメリカ)