Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『HEISTERS』(トビー・フーパー)


 映画評論家・遠山純生氏のTwitterから情報を得て、トビー・フーパーの初期短編『HEISTERS』(1964年)をyou-tubeで鑑賞。トビー・フーパーといえば『悪魔のいけにえ』(1974年)でホラー映画史上に燦然と輝く足跡を残す偉人。昨年(2017年)、惜しくも亡くなった。フーパーは1943年生まれだから、本作は若干21歳の時の作品だ。サイレント仕立てなので原語版でも鑑賞には全く問題なかった。


 お尋ね者の3人組が追っ手を逃れて古城に逃げ込む。そこで仲間割れの挙句、爆死するまでを描く。古城の地下室や奇怪な装置(コーマンの『恐怖の振り子』に出てきたギロチンのミニ版も登場)など怪奇映画趣味と、スラップスティックな趣向がミックスされていて、『悪魔のいけにえ2』からさほど遠くない映画だなあと思った。HEISTERSとは「酔っ払い」とか「飲んだくれ」といった意味。遠山氏は『泥棒たち』の邦題で紹介していた。


 フーパーといえば『悪魔のいけにえ』はもちろん、個人的にはリアルタイムで接することが出来た2作『ポルターガイスト』『スペース・バンパイア』の印象が強い。フィルモグラフィーを見ると「この道(ホラー)一筋」という感じだが、果たして本人の意に沿ったものなのかは分からない。本作など見ると、明確な喜劇志向が感じられ、実はコメディタッチの活劇なんてのもやりたかったんじゃないかなと想像する。フーパー好きの黒沢清がVシネ『勝手にしやがれ!』シリーズ(特に『成金計画』あたり)で展開したような路線を。