Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『キートンの大学生』(ジェームズ・W・ホートン)

キートンの大学生 [DVD]

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 久しぶりのバスター・キートン、未見だった『キートンの大学生(カレッジ・ライフ)』(1924年)鑑賞。運動音痴の優等生(キートン)が、好きな女の子を追ってスポーツの盛んな大学に入学。アルバイトで学費を稼ぎながら、スポーツを頑張るが・・というお話。


 これまでキートンの映画を見て退屈したことはなかったが、本作は何故だかとても辛かった。キートンが超絶的なアクションで様々な困難を克服するという筋立ては他の作品と変わらないのに。そもそも「運動音痴のガリ勉」というキャラ設定が合っていないのかもしれない(キートンが運動音痴の役柄なんて・・・)。冒頭、キャラ設定の説明として展開する高校の卒業式のシークエンスからして辛かった。土砂降りの雨、母親の重たい存在感、周囲から浮きまくった主人公の孤独描写・・・それらが少々くどいというか、妙に生々しく描かれていて、笑えなかったなあ。キートンのアクションは他の作品と変わらず凄いし(あらゆるスポーツを一通り試すのだ)、胴上げされるキートンが傘を開いてゆっくり落下する(その瞬間だけスローモーションになる)という夢のような感覚のショットなど、楽しい場面もあるのだが・・・。


 ストーリーが明瞭な分だけ、キートンならではのシュールな感覚に乏しいからかもしれない。もしくは、仕事で疲労した平日の深夜帯にモノクロのサイレント映画を見るという行為が無茶だったのかもしれない。映画が悪いわけではなくて、こちらのコンディションの問題だったのかもしれないが・・・。


(『キートンの大学生(キートンのカレッジ・ライフ)』 COLLEGE 監督/ジェームズ・W・ホートン 脚本/カール・ハルボー 撮影/デイヴ・ジェニングス 出演/バスター・キートン、アン・コーンウォール、ハロルド・グッドウィン 1927年 65分 アメリカ)