Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『光る眼』(ジョン・カーペンター) 

光る眼 [DVD]

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 先日、深夜にTVで『光る眼』(1995年)が放映されたのでもの凄く久しぶりに再見。クリストファー・リーヴささきいさおの吹替版にて。『未知空間の恐怖/光る眼』(1960年)を我らがジョン・カーペンター監督がリメイクしたホラーSF。オリジナル版は未見なので比較は出来ないけれど、地味ながらなかなか良く出来た小品だと思う。改めて見直しても面白かった。


 アメリカの片田舎の小さな町が舞台。ある朝謎の飛行物体?が飛来し、町の人々が皆意識を失って倒れてしまう・・・という映画の冒頭部分。保安官が町へ入ろうとして道路を歩き出すと、やはり意識を失って倒れてしまう。目に見えないその境界を描くにあたって、「ここから先が危ない」と道路に白線を引いてみせる潔い描写がカーペンターらしいなあと思う。例えば『ヴァンパイア/最期の聖戦』における「吸血鬼を日の光の下へ引きずり出せば勝ち」というルール、『ニューヨーク1997』における「周囲を壁で遮断されて監獄となったマンハッタン」という舞台設定、『ゼイルブ』における「サングラスをかけると宇宙人が見える」という描写、『エスケープ・フロム・L.A.』における「世界の崩壊=明かりが消えて真っ暗になる」という描写・・・どれも驚くべきシンプルさで効力を発揮するカーペンターイズムである。主人公の医師(クリストファー・リーヴ)は、光る眼の子供たちに心を読まれないように、初めは海、次にはレンガの壁を心に思い浮かべてテレパシーをシャットアウトする。そこで本当にレンガの映像をインサートする(子供たちのテレパシー攻撃でレンガが崩れていく!)のにはさすがに笑ってしまった。サイレント映画じゃないんだから。でもそんなストレートなところも何故か嫌いになれないのであった。


 カーペンター作品と言えば、監督自ら音楽も手掛けるのが定番。本作もカーペンター自身が音楽にクレジットされていて、共同で担当しているのはデイヴ・デイヴィス。デイヴ・デイヴィスってあの?と思って調べたら、やっぱりザ・キンクスのデイヴ・デイヴィス本人だった。NETで調べたら「デイヴがスピリチュアル方面に行ってた頃」みたいな表記に出くわしたけど、そうだとしてもいきなりこの映画ってのがなあ。ハードロック志向のカーペンターと話があったのかもしれない。そういえば、カーペンターはオカルトやホラー、SFジャンルを多数手掛けているにもかかわらず、そういった「スピリチュアル方面」な胡散臭さは一切感じられないよね。


(『光る眼』 JOHN CARPENTER'S VILLAGE OF THE DAMNED 監督/ジョン・カーペンター 脚本/デヴィッド・ヒメルスタイン 撮影/ゲイリー・B・キッブ 音楽/ジョン・カーペンター、デイヴ・デイヴィス 出演/クリストファー・リーヴ、カースティ・アレイ、リンダ・コズラウスキー、マーク・ハミルマイケル・パレメレディス・サレンジャー 1995年 アメリカ 98分)


デイヴ・デイヴィス(紙ジャケット仕様)

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