Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ベンドシニスター』(ウラジミール・ナボコフ)

ベンドシニスター (Lettres)

ベンドシニスター (Lettres)


 ウラジミール・ナボコフ『ベンドシニスター』(1947年)読了。ナボコフってあの有名な『ロリータ』のナボコフ。『ベンドシニスター』は亡命後のナボコフアメリカで書いた小説で、『ロリータ』の出版は1955年だからそれ以前に書かれたものだ。本書がかつてサンリオSF文庫から出ていたというのを知って興味をひかれたので、みすず書房から出ている再版(1999年)バージョンを図書館から借りて読んでみた。


 これが何で「SF文庫」なのかといえば、独裁政治の恐怖を描いたいわゆるディストピアものなのだった。主人公の哲学教授クルークは、独裁者の圧政に不屈の態度で立ち向かってゆく(というよりは頑固で言うことを聞かない、という感じか)。クルークはかつて独裁者と同級生だった過去があり、そのことが単純に虐げる者と虐げられる者という二分化に陥らない複雑な感情を醸し出している。


ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)