Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ゴジラVSビオランテ』(大森一樹)


 先日映画を録画したディスクの整理をしていて、『ゴジラVSビオランテ』(1989年)を発見。何気に見始めたら、深夜にもかかわらずつい最後まで見てしまった。画面に重量感がないなあとか個々の描写が軽すぎるなあとか公開当時見て覚えた不満は払拭されることがなかったが、それでも充分面白い。テンポが良いし、84年版『ゴジラ』の破壊の後から始まる設定や、ビオランテの異様な造型も面白い。峰岸徹演じる自衛官小高恵美演じる超能力少女も印象的。けっこう好きな映画です、これ。


 目下のところ実写ゴジラ映画の最新作『シン・ゴジラ』は、多くのファンが考える「こんなゴジラ映画を見たい」「今ゴジラを撮るならこうだよね」という願望を実際に作品として提示して見せた(なおかつ大ヒットを記録した)ということで大きなエポックであった。今後、日本のゴジラ(怪獣)映画は、特撮テクニックのみならず作劇や描写のリアリティの置き所をどこに据えるのかという点で『シン・ゴジラ』がメルクマールになるのだろうと思う。


 『シン・ゴジラ』以前にひとつのエポックとなったゴジラ映画はと言えば、やはり本作『VSビオランテ』であったと思う。シリーズ第17作にあたる『VSビオランテ』は、新しいアイデアを求めてストーリー原案を公募し、脚本と監督に自主映画出身の大森一樹を抜擢、音楽には「ドラゴンクエストシリーズ」で知られるすぎやまこういちを起用するなど、東宝としても新しいゴジラ映画を作ろうという意欲があったことがうかがえる。ざっくりいうならば、80年代に低迷していたゴジラ(怪獣)映画は、大森一樹監督・脚本によるゴジラ映画(本作と、次の『VSキングギドラ』)で息を吹き返し、再びヒットシリーズとして認知され、金子修介監督+伊藤和典脚本+樋口真嗣特撮による平成ガメラシリーズを経て、興行的・質的な高さを兼ね備えた『シン・ゴジラ』に至るという流れ。『シン・ゴジラ』は一日にして成らず。


 ハリウッド版怪獣映画の快作『キングコング:髑髏島の巨神』のエピローグでは、続編にはゴジラその他が登場することが予告されていた。それを受けて、果たして邦画ゴジラ映画はどのような方向に進んでいくのだろうか。ここはいっそ高橋洋に脚本を任せ怨念の一大カルト映画に仕上げるのはどうだろう。オリンピックに沸く東京を復活したゴジラが襲い、各国の要人や選手団が人質状態になったまま、核爆弾投下のタイムリミットが刻一刻と迫る・・・。って、それはないか。


(『ゴジラVSビオランテ』 監督・脚本/大森一樹 撮影/加藤雄大 音楽/すぎやまこういち 出演/三田村邦彦田中好子高嶋政伸峰岸徹高橋幸治小高恵美 1989年 105分 日本)