Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『平成特撮の夜明け』(映画秘宝セレクション)

平成特撮の夜明け (映画秘宝セレクション)

平成特撮の夜明け (映画秘宝セレクション)


 『ゴジラVSビオランテ』の大森一樹監督、富山省吾プロデューサーのインタビューが掲載されていたので、映画秘宝セレクション『平成特撮の夜明け』(洋泉社)を読んでみた。昭和の時代から続く怪獣(ゴジラガメラ)、ウルトラマン仮面ライダー戦隊シリーズといった日本の誇る特撮ヒーローたち。今でも新作が作られるほどの人気を誇っているのは、低迷期を大胆な「リブート」に成功して乗り切ったからだ、という視点から、当時作品にかかわったクリエイターたちへインタビューを行ったのが本書。


 本書のインタビューでも語られているように、80年代において「ゴジラ映画」は半ば馬鹿にされるような存在であった(まして「ガメラ映画」においておや)。作り手にも「このままでは駄目だ」という意識があったようで、新しいアイデアを求めてシナリオ原案を公募し、演出にはアメリカ映画のようなスピーディーな娯楽作品をという意向が盛り込まれた。そこで脚本の仕上げと監督に抜擢されたのが自主映画出身の大森一樹。自主映画からATG配給のインディペンデント作品、東宝のアイドル映画、そしてゴジラ映画(これぞ極め付きのジャンル映画)へという流れは、もともと娯楽志向である大森監督にとっては違和感の無いものであったようだ。


 『ゴジラVSビオランテ』の他にも、『地球戦隊ファイブマン』(1990年)の特撮監督・佛田洋、『ウルトラマンG』(1990年)の脚本・會川昇、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)の監督・金子修介、脚本・伊藤和典、造形・原口智生、『ウルトラマンティガ』(1996年)のプロデューサー・笈田雅人、脚本・小中千昭、デザイナー・丸山浩、『仮面ライダークウガ』(2000年)のプロデューサー・高寺成紀、監督・石田秀範、そして平成特撮映画のキーパーソンとも言える樋口真嗣、各氏のインタビューが掲載されている。特撮映画やドラマを取り巻く状況、「リブート」作品に関わったスタッフの熱意と試行錯誤が生々しく伝わってくる興味深い1冊であった。