Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『レディ・プレイヤー1』(スティーヴン・スピルバーグ) 


 久々の劇場鑑賞は、スティーヴン・スピルバーグ監督の新作『レディ・プレイヤー1』。現在スピルバーグ作品は、本作と『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の2本が劇場で公開中だ。


 スピルバーグ監督は歴史の様々な局面を切り取ったシリアス路線がある一方で、映像テクノロジーの進歩をストレートな物語に落とし込んだ娯楽路線がある。後者の典型的な作品は『ジュラシックパーク』であり、本作はその路線の最新版と言えるだろう。古くはオーソン・ウェルズフランク・キャプラから、ゴジラジョン・ヒューズ映画、果てはアイアン・ジャイアント機動戦士ガンダムまで、膨大な映画・コミック・アニメ・ゲーム・音楽の引用が猛スピードで登場する。正にポップカルチャーの洪水。好きなモノ・楽しいモノについて思う存分に語る多幸感に溢れていて、観客もまた幸せな気持ちになってしまう。何故か80年代作品の登場する率が高くて悶絶した。中でもワンシークエンス丸々使って展開するキューブリック・オマージュには仰天。スピルバーグはかつてキューブリックの企画を引き継いで『A.I.』を完成させた経緯があり、思い入れも強いのだろうなと思うけれど、まさかあそこまでやるとは・・・。諸々の引用はゲーム世界のアイテムという設定に織り込まれているので、元ネタを知らなくても楽しめるように作ってあるのが上手い。


 テーマ的には「ゲーム=逃避=悪」という図式ではなくて、「ゲームも良いけど週二回くらいはお休みするのがいいんじゃない」と折衷案に落としたのがいい塩梅であった。スピルバーグの自画像を思わせる<OASIS>創始者の控えめな存在も好ましい。老けメイクで脇役出演のサイモン・ペッグが好演を見せてラストをさらう。こんな超大作のヒロインがジョイ・ディヴィジョンのTシャツ着てるというのもツボだった。等々、まだ上手く感想をまとめ切れていないけれど、楽しかったですよ、心から。


(『レディ・プレイヤー1』 READY PLAYER ONE 監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/ザック・ペンアーネスト・クライン 撮影/ヤヌス・カミンスキー 音楽/アラン・シルヴェストリ 出演/タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、ベン・メンデルソーン、T・J・ミラー、サイモン・ペッグマーク・ライランス 2018年 140分 アメリカ)


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