Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

「お酒映画ベストテン」

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白


 ワッシュさん「男の魂に火をつけろ!」http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/ 恒例の映画ベスト10企画「お酒映画ベストテン」に投票します。順不同です。


1『ダンボ』(監督ベン・シャープスティーン・1941年・アメリカ)

2『秋刀魚の味』(監督小津安二郎・1962年・日本)

3『バーフライ』(監督バーベット・シュローダー・1987年・アメリカ)

4『トゥリーズ・ラウンジ』(監督スティーヴ・ブシェミ・1996年・アメリカ)

5『白い刻印』(監督ポール・シュレイダー・1997年・アメリカ)

6『孤独な場所で』(監督ニコラス・レイ・1950年・アメリカ)

7『火山のもとで』(監督ジョン・ヒューストン1984年・アメリカ)

8『シャイニング』(監督スタンリー・キューブリック・1980年・アメリカ)

9『フライト』(監督ロバート・ゼメキス・2012年・アメリカ)

10『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(監督エドガー・ライト・2013年・イギリス)


 何の迷いもなく10本選べたけど、これって「酒」というより「酔っ払い」映画だよなあと。ワッシュさんの意図するところとは違うかもしれん。『ブレードランナー』に出てくるあのボトルが格好いいよね、とかそういうセレクトすれば良かったのかも。


 1『ダンボ』は言わずと知れたディズニー・クラシック。酒樽に落ちたネズミとダンボが酔っ払う場面、動物(子供)の飲酒と酩酊状態の過剰な演出が凄い。


 2『秋刀魚の味』は何とも言えぬ寂寥感が漂う小津の遺作。劇中やけに飲酒の場面が多くて、同窓会で、小料理屋で、バーで、旧友の家で、と映画の半分くらいは酒を飲むシーンだったような気がする。東野英治郎の泥酔演技、笠智衆の千鳥足が素晴らしい。


 3『バーフライ』は酔いどれ無頼作家チャールズ・ブコウスキーの原作・脚本。ミッキー・ロークフェイ・ダナウェイ演じる中年酔っ払いカップルの飲んだくれの日常。迷惑なアル中を必要以上にロマンティックに描く気取った映画は大嫌いだが、本作は小汚くてしょうもないところが良かった。


 4『トゥリーズ・ラウンジ』はスティーヴ・ブシェミの監督・主演作で、ショットバーの二階に住むダメ男の話。昼間から酒飲んで、友達の娘に手を出して、とロクでもない。


 5『白い刻印』は親父が酔っ払いで暴力を振るう。しかもジェームズ・コバーンだから誰もかなわない。コバーンが手の甲に塩を盛り、それをつまみに酒を飲むシーンがある。


 6『孤独な場所で』はフィルム・ノワールの名作。主人公(ハンフリー・ボガート)は殺人の嫌疑をかけられたハリウッドの脚本家。アルコール中毒で、飲むと暴力を振るう(しかも記憶を無くす)。


 7『火山のもとで』はジョン・ヒューストン監督晩年の1作。英国領事(アルバート・フィニー)が酔っぱらってメキシコの町を彷徨う。酔っ払い特有の子供っぽい振る舞いがリアルだった。


 8『シャイニング』は、執筆に行き詰った作家志望の中年男(ジャック・ニコルソン)がアルコールに逃げて錯乱、家族を殺そうとする。って風に要約されてしまいそうなところが嫌だったんだろうなあキングは。


 9『フライト』は清濁併せ持つ苦々しい人間ドラマで、依存症の生理が巧みに描かれた近年出色のアル中映画。


 10『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』は久しぶりに旧友たちの前に現れた悪友(サイモン・ペッグ)が、地元のパブ全制覇のハシゴ酒に誘う。この映画はもう隅から隅まで何だか他人事とは思えなくて、ガッチリと心情にリンクしてしまい泣きそうだった。故郷への愛憎という裏テーマもさることながら、主人公のサイモン・ペッグが音信普通となったある友人に見えちゃって。


 ウチの親父は幸い暴力こそ振るわなかったものの相当の酒飲みで、自分が子供の頃は本当に嫌で嫌で仕方がなかった。『白い刻印』のコバーンや『火山のもとで』のアルバート・フィニーの酔っ払い演技を見ていると、全盛期の親父を生々しく思い出したものだ。酔っ払いは嫌いだと言いながら、自分も大人になってそれなりの酒飲みになってしまった。でも、あんなに堂々と開き直って酒を飲めないなあと思う。どちらかといえば自分は『トゥリーズ・ラウンジ』のブシェミや『フライト』のデンゼル・ワシントンに共感を覚える。酔っ払い(アルコール中毒)ジャンルのクラシック『失われた週末』の主人公(レイ・ミランド)の挙動不審な様子だって笑えない。まあ、行き着くところは一緒なのかもしれないが。


 さておき、「お酒映画」ということで細分化するならば、イギリスならばパブ映画、韓国映画なら焼肉店、といったお国柄を繁栄した飲酒スポット10本とか、乾杯の名場面10本とか、酒豪対決名場面10本とか、色んな切り口で楽しめそうだなと思う。


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