Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ロールスロイスに銀の銃』(オシー・デイヴィス)

 

 友人の妙愛博士にディスクをお借りして、オシー・デイヴィスロールスロイスに銀の銃』(1970年)鑑賞。墓掘りジョーンズ(ゴッドフリー・ケンブリッジ)、棺桶エド(レイモン・サン・ジャック)とあだ名される黒人刑事コンビを主人公としたバディ・コップもの。新興宗教の宣教師が信者から巻き上げた多額の寄付金を巡って、2人が派手な捜査を展開するアクション・コメディ。

 

 映画は予想以上にユルうううういタッチ。バディものらしい気の利いた会話(というより雑談)を交わしながら、カーチェイスしたり町中で銃を乱射したり。2人のコンビネーションが見せ場という訳でもない。この感覚は、90年代に全盛となったコミカルなバディ・アクションのようだった。このジャンルの原型は『フリービーとビーン大乱戦』かと思っていたが、こちらの方が早いのかな。呑気なテンポと生々しいロケーション、ファッション、そして全編を彩るソウルミュージックのおかげで楽しく見終えることが出来たけれども。本当の勝者が常田富士男似のジャンク屋というオチが愉快だった。

 

 70年代ブラックスプロイテーションにおける悪役は勿論白人だが、同時に最も憎むべき敵として描かれるのは裏切り者の悪い同胞。本作も正にそういった構図で、悪役には容赦ない。白人の上司は無能で、コメディリリーフとしてからかいの対象となるのは若い白人警官という実にわかりやすい構図。肝心の墓掘りジョーンズと棺桶エドが有能な刑事に見えないところが何ともユルい。

 

 監督・脚本のオシー・デイヴィススパイク・リー作品の俳優として顔は知っていたが、メルヴィン・ヴァン・ピープルズと並ぶ黒人監督のひとりであり、公民権運動の活動家としても知られる人物なのだという。