Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『嘘じゃないんだ!』(ドナルド・E・ウェストレイク)


 ドナルド・E・ウェストレイク『嘘じゃないんだ!』Trust Me on This(1988年)読了。


 スターのゴシップや怪しげな健康法、UFOの目撃情報といった刺激的で下品な記事が売り物の新聞社に就職した新人記者のサラ。編集部の個性的な面々に振り回され、理想と現実のギャップに悩みながら取材に駆け回るサラでしたが、殺人事件に関わったことから何者かに命を狙われて・・・というお話。


 猪突猛進の主人公サラをはじめ、はぐれ者揃いの編集部メンバー、新聞社の上層部や雇われカメラマンたち、スクープされる側まで、個性溢れる(というか奇人変人揃いの)濃おおおいキャラクターが次々登場します。キャラクターの立ち具合といい、事件に次ぐ事件の目まぐるしい展開といい、正にハリウッド映画のような(というか最近で言えば良質の海外ドラマシリーズのような)エンターティンメント作でありました。ジャーナリズムを題材に取りながら社会派的な堅苦しさは皆無で、記者のモラルなんてどこ吹く風、スラップスティックな馬鹿騒ぎに終始するのがいっそ清々しい。エピソードが盛りだくさん過ぎていささかとり散らかった印象を受けるのが難点でしょうか。


 劇中では主人公サラと上司ジャックの恋愛関係も描かれます。最後はまるで「おしどり夫婦探偵」みたいな雰囲気なので、続編もありかなという感じです。