Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『トラウマ恋愛映画入門』(町山智浩)

 町山智浩氏の『トラウマ恋愛映画入門』(集英社)をやっと読みました。「忘れたくても忘れられない」傷跡を残す映画を紹介した名著『トラウマ映画館』の姉妹編の趣向で、氏が小説すばるに連載していた「オクテのための女と男の映画館」をまとめたもの。「オクテのための」と銘打っている通り、伸び伸びと恋愛を謳歌するような明るく楽しい映画はほとんど採り上げられていません。標題の通り「トラウマ」を呼び覚ますヘヴィーな作品がずらりと並んでいます。


 紹介されている作品は、『チェイシング・エイミー』『アニー・ホール』『エターナル・サンシャイン』『日の名残り』『アルフィー』『ことの終わり』『めまい』『パッション・ダモーレ』『ジェラシー』『隣の女』『リトル・チルドレン』『ラストタンゴ・イン・パリ』『愛のコリーダ』『ラスト、コーション』『幸福』『赤い影』『アイズ ワイド シャット』『ブルーバレンタイン』『逢びき』『道』『アウェイ・フロム・ハー』『永遠の愛に生きて』の22本。中には、今やマイフェイバリットの1本である『赤い影』(これだけは映画秘宝に掲載された原稿ではないかな?)も含まれています。あれが「恋愛映画」なのかというのは異議もありそうですが、男女の違いを深ああああく見つめた映画であるからして、個人的には納得です。


 個人的にあんまり「恋愛映画」というジャンルそのものに興味を持てなかった故に、紹介された作品の内、半分の11本しか見ていませんでした。恋愛映画って、見ていて身の置き所に困るんだよね。未見の中で気になるのは、『パッション・ダモーレ』(愛は本当に美醜を超えるか?)、『ジェラシー』(嫉妬は恋から生まれ、愛を殺す)、『ブルーバレンタイン』(結婚は愛のゴールでなく始まりである)あたり。あ、ニコラス・ローグは2本採り上げられているのか。


トラウマ恋愛映画入門

トラウマ恋愛映画入門