Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『デルモンテ平山の「ゴミビデオ」大全』(映画秘宝セレクション) 


 『デルモンテ平山の「ゴミビデオ」大全』(2017年)読了。1980年代、『週刊プレイボーイ』に平山夢明先生が「デルモンテ平山」名義で連載していたビデオ紹介コラムを収録した1冊。ネタに詰まってゴミビデオを紹介したらウケて、そのままゴミビデオ専門のコーナーになってしまったのだという。連載当時は知らなかったけど、映画秘宝初期のMOOK『エド・ウッドとサイテー映画の世界』に再録されていたのを読んだことがある。


 紹介されている作品は、「これレンタル屋にあったなあ」とVHSのパッケージを思い出す作品もあれば、「本当にこんな映画あるのか?」と首を傾げたくなるような怪しい作品も。っていうか、8割方後者かもしれない。これらは「カルト映画」ではなくて「ゴミビデオ」。すなわち省みられることなく捨てられていった作品たち。見たものの記憶の彼方に忘れられた名も無き映画、そもそも誰に見られることもなくワゴンで投売りされて消えていった映画、それらは今や本書の平山先生の文章の中にしか存在しない。平山先生はそんな映画たちに愛情をこめて紹介して・・・なくて、いい加減で投げやりな文章は「ゴミビデオを見て虚しく失った2時間」をも読者に体現させる。本章ではコラムのつなぎに「こりゃまたケッコウな1本だよ、オッカサン!」とか平山節が炸裂していて爆笑。


 紹介された作品を見ていくと、中には比較的知られた作品も混じっている。『レデイ・プレイヤー・1』でもネタにされていた『バカルー・バンザイ』や、『ピーウィーの大冒険』(ティム・バートン)、『フライパン殺人』(ポール・バーテル)、『電撃脱走 地獄のターゲット』(ダグラス・ヒコックス、主演オリバー・リード)、『ドリラー・キラー』(アベルフェラーラ)、『マニアック』(ウィリアム・ラスティグ)、『家庭教師』(渡辺文樹)、『ディーモン 悪魔の受精卵』(ラリー・コーエン)、『悪魔の凶暴パニック』(ジェフ・リーバーマン)、『フランケンシュタイン 禁断の時空』(ロジャー・コーマン)、東宝の怪獣映画『決戦!南海の大怪獣』『三大怪獣 地球最大の決戦』なんても混じってたりして。


 本書は、ビデオデッキの普及に伴い1980年代に隆盛を極めたビデオレンタル店の様子、有象無象の作品が溢れたビデオ・バブル期の空気がパッケージされた貴重な書物かもしれない。本書の表紙は、クローネンバーグの『ヴィデオドローム』の一場面。生き物のように隆起したTVモニターに頭を突っ込むジェームズ・ウッズは、前のめりで貪るように映画を見狂っていた当時の俺らみたいじゃないか。


 平山夢明先生といえば、何とあの『ダイナー』(バイオレンス小説とグルメ小説が融合を果たした問題作!)が映画化されるとの情報が。監督は蜷川実花、主演は藤原竜也、とのことで、明らかに何か違う気がするが・・・その仕上がりやいかに。オオバカナコは誰が演じるんだろうなあ。


ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)