Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

読書記録その3  

 昨日の続きです。最近読んだ書籍、または大分前に読んだけど感想を書きそびれていた書籍について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。


『新・銀河ヒッチハイクガイド』(オーエン・コルファー)  

 ダグラス・アダムズの人気シリーズ『銀河ヒッチハイクガイド』のオフィシャルな続編『新・銀河ヒッチハイクガイド』And Another Thing. ..(2009年)。上下巻の長編。オリジナルシリーズの大ファンなので、恐る恐る読んでみたけど、面白かったので安心した。オリジナルの物語をちゃんと生かした展開には嬉しくなった。悪ふざけというか、ナンセンスな脱線ぶりはオリジナルの方が遥かに上だったが。まあこれはこれで。


新 銀河ヒッチハイク・ガイド 上 (河出文庫)

新 銀河ヒッチハイク・ガイド 上 (河出文庫)



『アンドロイドの夢の羊』(ジョン・スコルジー) 

 ジョン・スコルジー『アンドロイドの夢の羊』The Android’s Dream(2006年)。題名に惹かれて読んだ一冊。題名見ての通りディックへのオマージュ(ほんの少々)ありつつ、基本は惑星間の貿易を巡る陰謀に巻き込まれた仕事人の活躍を描くエンターテインメントSF。読み物としては面白かったけど、個人的な好みとしてはどうも描写が下品で好きになれなかったなあ。端的に言って、シモネタが多すぎると思う。


アンドロイドの夢の羊 (ハヤカワ文庫SF)

アンドロイドの夢の羊 (ハヤカワ文庫SF)



『九百人のお祖母さん』(R・A・ラファティ)  

 カルト的な人気を誇るR・A・ラファティの短編集『九百人のお祖母さん』Nine Hundred Grandmothers(1970年)。SFと言うよりは法螺話と呼ぶのが相応しいような、すっとぼけた短編がたくさん収録されている。人類の起源とか、宇宙の成り立ちとか、想像もつかない異星人たちの文化とか、やけにスケールが大きくて、ふざけてる割にどの話も妙な説得力があるのが凄い。


九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)



『第六ポンプ』(パオロ・バチガルピ) 

 パオロ・バチガルピの第一短編集『第六ポンプ』Pump Six and Other Stories(2008年)。既読の長編『ねじまき少女』『シップブレイカー』も面白かったんだけど、若干ユルいというか薄味なところが感じられた。それに比べて本書に収録された短編は密度が濃く、毒気も強い。長編よりもバチガルピのやりたいことや持ち味が存分に発揮されているような印象を受けた。表題作をはじめ「カロリーマン」「タマリスクハンター」といった環境破壊やエネルギー問題を扱った作品のリアリティのある描写はバチガルピの独壇場。かと思えば、身体を楽器のフルートのように改変された二人の少女を描く「フルーテッド・ガールズ」のような繊細な作品もある。


第六ポンプ (ハヤカワ文庫SF)

第六ポンプ (ハヤカワ文庫SF)



『スロー・バード』(イアン・ワトスン) 

 イアン・ワトスンの日本オリジナル編集となるベスト短編集『スロー・バード』Slow Birds(ハヤカワ文庫SF)。イアン・ワトスン自身の書き下ろし前書きと、大森望氏による熱のこもった解説付き。意外とバラエティに富んだ作品が並んでいて、中ではやはり奇想といいSFらしさといい名アンソロジー『アンティシペイション』にも収録されていた「超低速時間移行機」が白眉かなと思う。後は岩壁に暮らす人々を描く「絶壁に暮らす人々」が好みだった。初期の代表的な二長篇『マーシャン・インカ』と『ヨナ・キット』はサンリオSF文庫の撤退とともない、現在はどちらも入手不可能とのこと。乞う復刊。 



 この項、続く。