Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

読書記録その4  

 昨日の続きです。最近読んだ書籍、または大分前に読んだけど感想を書きそびれていた書籍について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。


『土曜日の実験室+詩と批評とあと何か』(西島大介

 西島大介(『凹村戦争』)の『土曜日の実験室+詩と批評とあと何か』(2016年)。コミック、エッセイ、評論、対談、あれこれ。『凹村戦争』を映画化するなら、黒沢清で実写映画化以外は絶対ヤダ、てなことが書いてあった。わかる・・・わかるよ。


凹村戦争 (ハヤカワ文庫 JA ニ 2-1)

凹村戦争 (ハヤカワ文庫 JA ニ 2-1)



『ドリーム・マシン』(クリストファー・プリースト) 

 クリストファー・プリーストの初期作品『ドリーム・マシン』A Dream of Wessex (1977年)。神経催眠装置につながった39人の男女の無意識が、理想の世界を想像し、その世界で現実同然に生活する。彼らは理想的な未来社会のデータを記憶にとどめ、やがて現実世界に帰還するのだ。だが一人の男がこの夢の世界にとどまったために、計画が狂い始めた・・・というお話。男女関係のもつれがドリーム・マシンに影響するあたりは何だかなあと思わないではないが。興味深いのは、想像世界に帰還しようとするヒロインを「現実/虚構」の二分化で批判しないところ。いいじゃん、逃避しても、って違うか。


ドリーム・マシン (創元SF文庫)

ドリーム・マシン (創元SF文庫)



『スペース・マシン』(クリストファー・プリースト) 

 こちらもクリストファー・プリーストの初期作品『スペース・マシン』The Space Machine(1976年)。偉大なる先達H・G・ウェルズへのオマージュとして書かれた一大娯楽大作。スピルバーグの『宇宙戦争』など見ると、こういった作品も今や映像化可能なのだなと思う。『宇宙戦争』よりさらにメカメカしくて残酷描写もエグい。


スペース・マシン (創元SF文庫)

スペース・マシン (創元SF文庫)



『逆転世界』(クリストファー・プリースト) 

 クリストファー・プリーストの初期作品『逆転世界』Inverted World (1974年)。〈地球市〉と呼ばれる要塞のような巨大都市が舞台。〈地球市〉はレール上を進む可動式都市である。主人公ヘルワードは成人し、〈地球市〉の移動を担うギルドの一員として初めて外界に出るが・・・というお話。これ、SFならではの奇想が爆発した傑作ではないですか。異様な世界の全貌が徐々に明らかになっていく後半には度肝抜かれた。これぞSF、これぞ物語を読む醍醐味。本作は今は亡きサンリオSF文庫の1冊だったというから、高校〜大学時代に読めたかもしれないのだなと思うと、残念だ。もっと早く手に取るべきだったなあ。


逆転世界 (創元SF文庫)

逆転世界 (創元SF文庫)



『夢幻諸島から』(クリストファー・プリースト) 

 クリストファー・プリーストの近作『夢幻諸島から』The Islanders (2011年)。プリーストの「夢幻諸島(ドリーム・アーキペラゴ」シリーズの集大成ともいうべき連作集。ガイドブックの体裁で書かれたエピソードまであって念が入っている。面白かったんだけど、恐らくプリーストが意識しているであろうバラードの『ヴァーミリオン・サンズ』に比べるとロマンが感じられないところが残念。 



 この項、続く。