Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

読書記録その5 

 昨日の続きです。最近読んだ書籍、または大分前に読んだけど感想を書きそびれていた書籍について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。 
  

『売女の人殺し』(ロベルト・ボラーニョ)  

 チリの作家ロベルト・ボラーニョの短編集『売女の人殺し』PUTAS ASESINAS(2001年)。ボラーニョは『野生の探偵たち』が大好きで、面白い作家がいるんだなあと思ったら、既に亡くなっていたのだった。ボラーニョが亡くなったのは50歳の時だという。前に友人のI君らと飲んだ時に「いつの間にか中上健次の年を越えてしまった」という話になったことを思い出す。日々の暮らしに追いまくられているうち無駄に年をとってしまったなあと。今やボラーニョ最期の歳になってしまったのか。それはさておき、本作は50歳の若さで亡くなったボラーニョの生前最後の短篇集なのだという。いつの間にか「ボラーニョ・コレクション」なる全集が刊行されているくらいだから、我が国でもずいぶん注目を浴びているのだなあ。表題作はもちろん、「目玉のシルバ」「エンリケ・リンとの邂逅」等々、収録された13編はどれも素晴らしい切れ味だ。


売女の人殺し (ボラーニョ・コレクション)

売女の人殺し (ボラーニョ・コレクション)

野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)

野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)



『2666』(ロベルト・ボラーニョ) 

 ロベルト・ボラーニョが肝不全でこの世を去った後に出版された遺作『2666』2666(2004年)。『2666』は「批評家たちの部」「アマルフィターノの部」「フェイトの部」「犯罪の部」「アルチンボルディの部」という五つのパートに分かれている。謎のドイツ人の小説家ベンノ・フォン・アルチンボルディの物語、アルチンボルディを探究している四人のヨーロッパ人の文芸批評家たちの物語、精神的に不安定な大学教授と家族の物語、ボクシングの試合を取材する為に街を訪れたスポーツ・ジャーナリストの物語、それらを繋ぎ合わせるのが、メキシコ北部のアメリカとの国境を接する街サンタ・テレサで発生した未解決の連続殺人事件(少なくとも三百人の若い、貧しい、大部分は無教育のメキシコの女性が殺された)だ。実在の事件「シウダード・フアレス連続殺人事件」をモデルにしたというこの未解決事件から、やがて謎の小説家アルチンボルディの物語へと収束してゆく。収束、というのは相応しい言葉ではないかもしれないが。『2666』は昨年2013年の夏頃に読み始めて、辞書みたいに分厚い本なので持ち歩くわけにもいかず、夜寝る前に少しずつ少しずつ読み進めた。結局読み終えたのは年末になってからだった。先が気になるという娯楽小説ではないし決して愉快な内容ではないけれど、長くてうんざりしたなんてことはないし、半年間、日々の終わりに数十分『2666』の世界に入り込むのは大きな悦びであった。


2666

2666


 この項、続く。