Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(佐々木典士)

 

 佐々木典士『「ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版』読了。著者は作家で編集者、「ミニマリスト」の佐々木典士氏。本書は海外23カ国語に翻訳され、世界累計で40万部を突破したベストセラーなのだという。

 

 精神状態が不安定な時に断捨離すると後で後悔するとはよく言われることで、これは自分も経験があります。徹底的にやり過ぎちゃって、冷静になってから「何であれを処分してしまったんだ!」と激しく後悔しても後の祭り。そんな失敗を何度か繰り返しながら今に至ります。試行錯誤を繰り返しながら断捨離を進め、ここ10年くらいで大分スリムになりました。ここから更に部屋を片付けなければならない局面を迎えているため、発想の転換のヒントはないか、意識改革ができればと読んでみました。

 

 Aというモノは部屋に置いておく必要が無い、どうしても必要ならばこういう方法で持っておけば良い(例えば写真は全てデータとして持っておけば良いのだ、とか)と自らの経験に即した断捨離の具体的な方法を提示する前半はためになります。自分がその通り実行できるかどうかはともかくとして、意義はよくわかりました。でも後半になるにつれて自己啓発本みたいになってゆくのがなんともなあ。ざっくり要約すると、断捨離するということは生き方を変える事なんだよ、みたいな。そうか「ミニマリスト」か。本書がベストセラーとなった理由も何となくわかったような気がします。そういう考え方、生き方をすることによって得られる喜びもあるでしょう。それを求める人が大多数いるというのもわかります。でも。

 

 結論としては、俺にはこんなの無理そうです。以前読んだ『本で床は抜けるのか』(西牟田靖)、『無限の本棚』(とみさわ昭仁)に存在していた葛藤やモノに対するこだわりを、自分はまだまだ振り切ることができない。当分はモノと格闘しながら生きていくことにします。