Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『厳重に監視された列車』(イジー・メンツェル)

厳重に監視された列車 イジー・メンツェル監督 [Blu-ray]

厳重に監視された列車 イジー・メンツェル監督 [Blu-ray]

  • ヴァーツラフ・ネツカーシュ/イトカ・ベンドヴァー/ヨゼフ・ソムル/ヴラスチミル・ブロツキー/ヴラジミール・ヴァレンタ/イトカ・ゼレノホルスカー/ナジャ・ウルバンコヴァー/イジー・メンツェル
Amazon

 

 チェコヌーヴェルヴァーグのイジー・メンツェル監督28歳のデビュー作『厳重に監視された列車』(1966年)。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ保護領下にあったチェコの田舎駅に見習いとして着任した童貞青年の奮闘を描く。童貞を捨てようと奮闘したり早漏に悩んだり、同僚とエロティックな遊戯(お尻にスタンプ!)に耽ったり・・・。堅苦しい邦題、1968年の第40回アカデミー賞外国語映画賞という情報から何やらシリアスな映画を想像していたら、軽妙でエロティックなコメディなのでありました。表題の『厳重に監視された列車』とは軍の補給物資を輸送する列車のこと。反ナチのレジスタンスがこの列車を爆破しようとするが・・・。あっけないラストがなかなか衝撃的。

 

 本作は1966年製作なので、チェコの改革運動「プラハの春」以前の作品か。ソ連軍がチェコへ侵攻し「プラハの春」が潰されて、チェコヌーヴェルヴァーグの監督たちは作品の検閲強化に反発、ミロシュ・フォアマン、イヴァン・パッサーらは国外へ逃れます。イジー・メンツェルはチェコに残って作品を作り続けたようです。この辺りの雰囲気は、先に見たドキュメンタリー番組『映像の世紀バタフライエフェクト ヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー』に描かれていました。イジー・メンツェルも地下でロック聴いてたりしたのだろうか。映画は第二次大戦中のお話ですが、映画製作後のチェコの政治情勢を考えるとまた考えさせるものがあります。軍靴の響きと青春の悶々。

 

『厳重に監視された列車』 Ostře sledované vlaky

監督/イジー・メンツェル 脚本/イジー・メンツェル、ボフミル・フラバル 撮影/ヤロミール・ショルフ 音楽/イジー・シュスト

出演/ヴィーツラフ・ネツカーシュ、イトカ・ベントヴァー、ヨゼフ・ソムル、ヴラスチミル・ブロスキー、ウラジミール・ヴァレンタ

1966年 チェコスロバキア