Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『翼よ!あれが巴里の灯だ』『あなただけ今晩は』(ビリー・ワイルダー)

 

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 未見だったビリー・ワイルダー作品を二本立て鑑賞。

 『翼よ!あれが巴里の灯だ』(1957年)。チャールズ・リンドバーグの大西洋無着陸横断飛行を描く実録ドラマ。比較的真面目なタッチで進行していく中、回想シーンではワイルダーのコミカルな演出が全開で楽しい。また女性から借りた手鏡、神父のペンダント、飛行を共にする蝿、町工場の犬など小道具の活かし方はさすがに巧い。一番の見せ場は町工場で「セントルイスの魂」号が出来上がるまでの描写かな。あれは燃える。

 主演ジェームズ・ステュアート。後半はほぼステュアートの一人芝居で展開。睡魔と闘いながら、飛行の進捗に一喜一憂する顔芸で引っ張る。遂にパリに到着した場面もなかなか衝撃的だった。表題がキメの台詞として映画を締め括るかと思ってたら、言わないんだあの台詞‥‥。

 『翼よ!あれが巴里の灯だ』は子供の頃見たような記憶もあったのだが、こうして見てみると勘違いのようだ。リンドバーグの子息誘拐事件を扱ったドキュメンタリー(再現ドラマ?)だったような気がする。

 

 

 続けて『あなただけ今晩は』(1963年)鑑賞。パリの娼婦街カサノバ通りを舞台に、子犬を連れた娼婦(シャーリー・マクレーン)と堅物警官(ジャック・レモン)の恋模様を描く艶笑コメディ。これは松竹の女シリーズinパリみたいな映画だった。全編ワイルダーの悪ノリが目について、楽しいというより居心地の悪い作品だったなあ。

 売春と搾取のシステムに対するあっけらかんとした描き方は、本作が製作された年代もあるだろうが、ワイルダーはあえてそこに批判は加えず描いてるようにも見える。シャーリー・マクレーンに篭絡されたジャック・レモンがヒモのリーダーに収まってたり、ヒモに貢ぐヒロイン像(男が堅気の仕事をするのを嫌がる)など。それも気になったけど、何より躁状態で画面を縦横に駆け回るジャック・レモンの怪演だ。X卿の再登場の仕方とか何なのあれは。