Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『チェイサー』(ジョルジュ・ロートネル)

『チェイサー』 MORT D'UN POURRI


 監督/ジョルジュ・ロートネル
 脚本/ジョルジュ・ロートネルミシェル・オーディアール
 撮影/アンリ・ドカエ
 音楽/フィリップ・サルド
 出演/アラン・ドロンモーリス・ロネミレーユ・ダルクステファーヌ・オードラン、クラウス・キンスキー、オルネラ・ムーティ
  (1978年・124分・フランス)


 アラン・ドロン主演のサスペンス・アクション『チェイサー』(1978年)見る。


 実業家グザビエ(アラン・ドロン)は、親友の代議士フィリップから彼の政治生命を脅かそうとした政敵のセラノを殺害したと告白される。グザビエはアリバイ工作を手伝うが、今度はフィリップが何者かに殺害されてしまった。犯人を探すグザビエは、セラノが書き記した政財界の汚職リスト「セラノ文書」を巡る争奪戦に巻き込まれてゆくが・・・。


 スタン・ゲッツのサックスをフィーチャーしたフィリップ・サルドのムーディーな音楽、名手アンリ・ドカエのクリアな映像美でハードボイルドな雰囲気を盛り上げる。が、いかんせんお話がゴチャゴチャして要領を得ず、派手なカーアクションも散発過ぎて盛り上がりに欠ける。政財界の汚職を告発するテーマも形ばかりで、映画としては単なる雰囲気モノって感じで残念であった。どんな危機に陥ってもアラン・ドロンが例のポーカー・フェイスで切り抜けるもんだからサスペンスが盛り上がらない、というのもあるかも。


 アラン・ドロンは実業家で、親友(かつての戦友らしい)のアリバイ工作を引き受けて事件に巻き込まれる。警察やギャングに追い回されて右往左往するばかりの前半はいまひとつ調子が出ないけれど、後半、主人公の行動が親友を殺した真犯人探しに絞られると俄然魅力を放ちだす。政財界の黒幕(クラウス・キンスキー!)から狩猟に招待される場面で、ライフルを手にした姿の何とサマになっていることか。かつての戦友との友情を守る終盤の台詞のキメっぷりはさすがドロンだ。


 ヒロインは公私に渡ってドロンのパートナーであったミレーユ・ダルク。もう一人、親友の愛人役で出演しているのがオルネラ・ムーティ。『シシリアの恋人』や『フラッシュ・ゴードン』等、70年代〜80年代に活躍したイタリアの美人女優だ。後にフォルカー・シュレンドルフの『スワンの恋』(1983年)でドロンと再共演している。本作ではミステリアスな美貌(とグラマラスな胸元)で目を楽しませてくれる。アップになると何故かソフト・フォーカスがかかったりして、彼女だけまるっきり特別扱いなのがおかしかった。