Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『プレステージ』(エドゥアール・モリナロ)


プレステージ』 L'HOMME PRESSE


 監督/エドゥアール・モリナロ
 脚本/モーリス・レイム、クリストファー・フランク
 撮影/ジャン・シャルヴァン
 音楽/カルロ・ルスティケリ
 出演/アラン・ドロンミレーユ・ダルク、モニカ・グェリトーレ
  (1976年・90分・フランス/イタリア)


 現在『プレステージ』と言えば、マジシャン対決を描いた映画(2006年、クリストファー・ノーラン監督)のことを思い出すだろう。しかし以前は『プレステージ』といえばアラン・ドロン主演作のことであった。未見であったが、カッコいいチラシ(下記)が印象に残っておりいつか見たいと思っていた。DVDを発見したので早速チェック。共演はドロンと私生活でもパートナーだったミレーユ・ダルク。監督は『Mr.レディMr.マダム 』シリーズのエドゥアール・モリナロ


 美術商ピエール(アラン・ドロン)は、抜群の行動力と駆け引きで高価な絵画や骨董品を入手するスリルを生きがいとしていた。富豪の残した屋敷の売買を巡って対立していたエドヴィージュ(ミレーユ・ダルク)と恋に落ちて結婚するが、仕事優先の姿勢は変わらなかった。ハネムーン先でも、仕事の情報が入ると、エドヴィージュを置き去りにして出掛けてしまう。ある日、エドヴィージュは、ピエールに妊娠したことを伝えるが・・・。


 カッコいいチラシの印象から、仕事に賭ける男の生き様を描いたハードボイルド調のドラマかと思っていた。大筋は間違っていなかったが、主人公のあまりにも強引なやり口と唐突な行動には感情移入不可能。しかも妊娠した妻に「9ヶ月は長過ぎる。7ヶ月に出産を早めろ」などと言い出す始末。英語版タイトルは「急ぐ男」MAN IN A HURRY。「生き急ぐ男」みたいなニュアンスだと思うけれど、急ぐにもほどがあるだろうっての。ジョゼ・ジョバンニ作品やジャン=ピエール・メルヴィル作品の寡黙なドロンが好きな自分としては、饒舌すぎる本作のドロンは大いに違和感あったなあ。映画としては基本的にメロドラマなんで、ちょっと期待外れであった。それにしても、ドロン当時44歳か。ううむ、濃過ぎる・・・。チラシの裏に書かれたコピーが味わい深い。


「いま 目の輝きが変わった! さらに魅力を増した にくいヒーロー ドロンがあなたの心をつかむ」 


 「にくいヒーロー」って・・・。さておき、アラン・ドロン主演で同じ邦題の映画と言えば、『チェイサー』(1978年)と『チェイサー』(2008年、韓国映画)というのもあるな。