ザ・バンドの足跡を辿るドキュメンタリー映画『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』(2019年)鑑賞。バンドの中心人物であったロビー・ロバートソンがバンドの誕生から解散まで、そしてその後の人間模様を語る。インタビュー映像にはブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトン、ヴァン・モリソン、ロニー・ホーキンス、タジ・マハール、ジョージ・ハリスン、ピーター・ゲイブリルといった大物ミュージシャンが多数登場してザ・バンドの偉業を称える。製作総指揮はザ・バンドのラストコンサート『ラスト・ワルツ』を監督したマーティン・スコセッシ。
本作は2016年に発表されたロビー・ロバートソンの自伝『ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春』が元になっています。メンバー5人の内、3人がすでに故人となり、現在のガース・ハドソンは登場しません。エピソードの切り口は多分にロビー目線になっていると思われ、故にこれは「ロビー・ロバートソンの目から見たザ・バンドの物語」なのだと思います。ロビーのバンドへの思い入れ、「かつて兄弟だった」メンバーへの複雑な思いは痛いくらい伝わってきます。それは感動的なのですが、正直言って、『ラスト・ワルツ』以降のメンバーの姿、特にリヴォン・ヘルムとの確執など知りたくなかった。ザ・バンドはいわゆるきらびやかなロックスター像とはかけ離れたイメージだけど、実は「下積み→成功→アルコールとドラッグ→不和→解散→破滅」のまったくもってロックスターお決まりの三面記事的なパターンを踏襲している様は見ていて辛かった。演奏場面が意外に少ないのも物足りず。上手く言えないのですが、この辛いドキュメンタリー映画を2時間見るくらいなら、彼らの豊潤なファーストアルバムとセカンドアルバムを聴いて2時間費やした方がずっと良いとさえ思う。(本作を見終えて直ぐに聴き返しました)
本作で良いなと思ったのは、使用されたスチールが素晴らしいところです。宣材はもちろん、レコーディングのオフショット、家族写真に至るまで全部がクラシック映画のワンシーンのごとく決まっていて、深いドラマを感じさせます。ロビー・ロバートソン、リック・ダンコ、リヴォン・ヘルム、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソン、皆人間味あふれる風貌で絵になるなあと思いました。にしても、セカンドアルバム『The Band』(1969年)のジャケ写なんて、メンバー皆20代のはず。風格あり過ぎて、とても年下には見えん。
『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』 Once Were Brothers: Robbie Robertson and the Band
監督/ダニエル・ロアー
出演/ロビー・ロバートソン、ブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトン、マーティン・スコセッシ、ジョージ・ハリスン、ロニー・ホーキンス、ヴァン・モリスン、ピーター・ゲイブリル
2019年 アメリカ・カナダ