Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ワイルド・アパッチ』(ロバート・オルドリッチ)

 

 ロバート・オルドリッチ監督、70年代の西部劇『ワイルド・アパッチ』(1972年)鑑賞(再見)。出演バート・ランカスターブルース・デイヴィソン、リチャード・ジャッケル、ロイド・ボックナーほか。居留地からアパッチ族の戦士ウルザナが仲間を連れて逃亡、騎兵隊の一団が後を追うが・・・。

 

 72年というニューシネマの時代で、かつ逃亡者の話とは言え、湿り気はほとんどなし。かと言ってオールドタイプのウエスタンの郷愁は微塵もない。追う者と追われる者の個性・立場の違いが際立ち、善悪を超えた部分でぶつかり合うゴツゴツした質感ばかりが印象に残ります。果たして「骨太な映画」とはこれの事か。その点では後年の『北国の帝王』等と同じで、まことにオルドリッチらしいドラマと言えるだろう。情け容赦ない残酷描写の連続で、えげつなさはマカロニウエスタンも真っ青。こういうの耐性があるつもりだったけど正直言ってかなりきつかったなあ。

 

 脚本はアラン・シャープ。70年代から80年代にかけて、この人のフィルモグラフィーはなかなか凄い。オルドリッチ(『ワイルド・アパッチ』)、ペキンパー(『バイオレント・サタデー』)、フライシャー(『ラスト・ラン/殺しの一匹狼』)、アーサー・ペン(『ナイト・ムーブス』)、ピーター・フォンダ(『さすらいのカウボーイ』)等々、錚々たる面々と組んでいるのだ。

 

 ちなみにバート・ランカスター主演、ロバート・オルドリッチ監督でもう1本『アパッチ』(1954年)というのがあります。バート・ランカスター演じるアパッチ族の戦士が騎兵隊に反抗し闘いを続けるというオルドリッチの力強い作品。脇役で、ブチンスキー時代のチャールズ・ブロンソンがランカスターを裏切るアパッチ族の若者の1人を演じています。ランカスターが残した恋人に横恋慕するくらいで大した見せ場はないが、ランカスターよりはずっとインディアンらしく見えるのでした。