Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『無法の王者ジェシイ・ジェイムス』(ニコラス・レイ)

 ニコラス・レイ監督『無法の王者ジェシイ・ジェイムス』(1957年)鑑賞。原題The True Story of Jesse James、実在したアウトロージェシー・ジェイムズを描いた伝記映画。

 

 南北戦争終結後に現われた無法者集団“ジェームズ=ヤンガー・ギャング”を描いた映画と言えば、ウォルター・ヒルロング・ライダーズ』、フィリップ・カウフマンミネソタ大強盗団』がすぐに思い浮かびます。ライ・クーダーの爽快な音楽をバックにスタイリッシュな映像とアクションで見せた『ロング・ライダーズ』、泥まみれで生々しい映像のいかにもニューシネマ以降な『ミネソタ大強盗団』、本作はそれらに先行する“ジェームズ=ヤンガー・ギャング”ものですが、これまた一味違う作品となっています。大元はヘンリー・キング監督『地獄への道』(1939年)であり、本作はそのリメイクとのこと。ちなみに続編はフリッツ・ラング(!)が監督した『地獄への逆襲』(1940年)。

 

 『地獄への道』は未見なので比較はできませんが、『無法の王者ジェシイ・ジェイムス』はとにかく雰囲気が刺々しい。映画は無残な失敗に終わったノースフィールド銀行襲撃の後、既に敗走状態となっている“ジェームズ=ヤンガー・ギャング”から始まります。ピンカートン探偵社の加勢で1人また1人と撃たれたり捕らえられたりして仲間は減ってゆく。逃亡の様子と、どうしてジェシー・ジェイムズが悪の道に走ったかを関係者が回想する過去の場面が交互に描かれます。(回想に入るつなぎにいちいち赤いモヤがかかる演出がおかしい)

 

 ジェシー・ジェイムズが悪の道に入ったのは、南北戦争の残した遺恨がきっかけであることが描かれていきます。義憤に駆られて始めたはずの犯罪が、銀行強盗を重ねて、いつの間にか名高いお尋ね者になっている。そこのワンステップが描かれていない(恐らく意図的に)代わりに、狂信的な南軍支持という一面はきっちり描かれていて、主人公たちに肩入れすることが難しい。アウトローのロマンを描く西部劇の楽しさが無いというか。ジェシー・ジェイムズを演じるのは甘いマスクのロバート・ワグナーですが、終始眉間に皺を寄せて渋い表情。最後は、ジェシー・ジェイムズを殺して名を上げたい仲間の裏切りによって、背中から撃たれて惨めに死んでいきます。アウトローを美化しない距離感は、これがThe True Storyとすれば、ニコラス・レイの立ち位置かとも思われ興味深いところです。『夜の人々』のレイにしてこの演出なので、ジェシー・ジェイムズに思うところがあったのかもしれません。

             

『無法の王者ジェシイ・ジェイムス』 The True Story of Jesse James           

監督/ニコラス・レイ 脚本/ウォルター・ニューマン、ナナリー・ジョンソン 撮影/ジョー・マクドナルド 音楽/リー・ハーライン

出演/ロバート・ワグナー、ジェフリー・ハンター、ホープ・ラング、アグネス・ムーアヘッド、アラン・ヘイル・Jr、アラン・バクスター

1957年 アメリ