Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『SUPER 8/スーパー8』(J・J・エイブラムス)

 この度、はてなに引っ越して参りましたキンスキーと申します。好きな映画や読書の事など中心にエントリーして参りますので、皆さまどうぞよろしくです。


 さて、最初のエントリーはSUPER8/スーパー8』について。最寄りのシネコン、MOVIX利府にて鑑賞。震災後、初の劇場鑑賞。


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 『SUPER 8/スーパー8』 SUPER 8


  監督・脚本/J・J・エイブラムス
  製作/スティーヴン・スピルバーグ
  音楽/マイケル・ジアッキノ
  撮影/ラリー・フォン
  出演/ジョエル・コートニー、エル・ファニングカイル・チャンドラー、ライリー・グルフィス
  (2011年製作・アメリカ映画・111分)


 1979年のアメリカ・オハイオ州の田舎町を舞台に、自主映画作りに励む少年たちと謎の生命体の遭遇を描くSF映画。J・J・エイブラムス監督による、スティーヴン・スピルバーグ作品へのオマージュが全編に散りばめられた映画である。エイブラムス監督は極めて真面目で丁寧なタッチで演出しているので、その辺の元ネタが分からなくても充分楽しめると思う。


 エイブラムス監督は1966年生まれ。自分は1967年生まれの同世代なので、ネタ丸分かりの微笑ましい映画であった。最初の方でカーズが、最後にはザ・ナックが流れるなんてところも楽しかった。ザ・ナックの「マイ・シャローナ」といえば、江口寿史の『GO AHEAD !!』だよね、なんて思い出したりして。オマージュが捧げられている70年代〜80年代前半のスピルバーグ映画ならば「母親と息子」の話になろうが、本作では「父親と息子」の話に変奏されている。この辺はエイブラムス監督の個人史が反映している部分であろうか。


 惜しむらくは、肝心の「スーパー8」(8ミリカメラ)とお話があんまり関係ないところ。映画の前半では自主映画撮影のディテールが丁寧に描かれるけど、後半は「スーパー8」って何だっけ?ってくらい忘れられてしまう。個人的にはもっとお話や見せ場に絡めて欲しかったなあと思う。


 主人公の少年は模型作りが趣味という設定。ならば「レイ・ハリーハウゼンを師と仰ぎ、怪物のモデリングが趣味」くらいまで突っ込んで欲しかった。となれば、少年たちが作っている映画はゾンビ映画ではなく怪獣映画、しかもダイナメーション(コマ撮り)でカクカク動くような映画になるだろう。エンディングで流れる自主映画が、もっと本篇と連動してたらさぞ楽しかったのではないかと思う。


 監督志望のおデブ君には、女性問題でふらふらせず、もっと映画にこだわって欲しかった。例えば、撮影した8ミリフィルムが証拠として軍に没収され、それを奪還するのに執念を燃やす、とか。怪物に追っかけまわされながらもカメラを廻し続ける、とか。ピー・ジャク版『キングコング』のジャック・ブラックみたいなキャラクターにしてもっと暴走して欲しかったなあ。


 謎の生命体の超能力で、少年たちの自主映画が夜空一杯に投影される・・・なんてクライマックスだったら最高だったろうなあ。ハリウッドのメジャー大作でそれはないだろうけど。8ミリ映画そのものは単なるお話のきっかけに過ぎないのが残念であった。せめて、8ミリフィルムの持つ肌触り、フェティッシュな魅力をもう少し伝えてくれたら良かったなあと思う。