Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

映画感想その6


 昨日の続きです。最近見た映画、または大分前に見たけど感想を書きそびれていた映画について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。



スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(J・J・エイブラムス) 

 オリジナルの『スター・ウォーズ』(現エピソード4)は正にジャストな世代に当たるのだけれど、封切当時は見ていない。地元の映画館にかからなかったのだ。封切でちゃんと見たのは3作目の『ジェダイの復讐』からで、1作目と世評の高い2作目『帝国の逆襲』は後追いでTVやレンタルヴィデオで見た。もし1作目を封切り当時(小学生だった)映画館で見ていたら、きっと多大な影響を受けていたと思うが、見るタイミングを逃してしまったせいか、本シリーズには全く思い入れがない。『エピソード1』からの三部作がまた薄っぺらくて非常に印象が悪く、世間の盛り上がりにますます気持ちが萎えていたのであった。

 で、エピソード7に当たる本作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、さすがJ・J・エイブラムス監督だけあって普通に面白い。『エピソード1』からの三部作の平坦な印象は払拭されたと言ってよい。旧作のファンへの目配せも抜かりなく、さすがは1作目直撃世代の監督だなあと感心した。とはいえ、メインの話がハン・ソロと息子の確執だったりして、また肉親ネタかよと。スケールが大きいんだか小さいんだか分からぬ世界観には今更やっぱり乗り切れず、つくづく1作目を封切当時劇場で見ていたらもっと楽しめたろうなあと悔やまれる。

(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』Star Wars: The Force Awakens 監督/J・J・エイブラムス 脚本/ローレンス・カスダンJ・J・エイブラムスマイケル・アーント 撮影/ダン・ミンデル 音楽/ジョン・ウィリアムズ 出演/ハリソン・フォードマーク・ハミルキャリー・フィッシャーアダム・ドライバーデイジー・リドリージョン・ボイエガオスカー・アイザック 2015年 アメリカ 136分)"




スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(ライアン・ジョンソン) 

 『フォースの覚醒』のその後を描く続編。監督は小気味良いSFアクション『LOOPER/ルーパー』を撮ったライアン・ジョンソン。昨年公開されると、賛否両論で盛り上がった本作(否、の意見を目にすることの方が多かったかも)。自分としては、シリーズに思い入れがない分、お話の粗さやちぐはぐな演出にもそんなに腹は立たなかった。今思えば、映画館で新作映画を見る喜びで些細な不具合はすべて帳消しとなった感はあったかもしれん。レイとカイロ・レンが共闘するチャンバラシーンの呼吸なんて悪くないと思うし、終盤の氷上での戦闘やルークが大ハッタリかます場面も楽しかった。しかし大多数のファンは「こんなのSWじゃない」と言ってるようなんで、人気シリーズとは難しいものだと思う。従来のファンを満足させ、かつ新しいこともやるというのは相当にハードルが高い難事業なのだなと。 

(『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』 STAR WARS: THE LAST JEDI 監督・脚本/ライアン・ジョンソン 撮影/スティーヴ・イェドリン 音楽/ジョン・ウィリアムズ 出演/デイジー・リドリーマーク・ハミルキャリー・フィッシャーアダム・ドライヴァージョン・ボイエガオスカー・アイザックアンディ・サーキス、ケリー・マリー・トラン 2017年 152分 アメリカ)




ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(ロン・ハワード) 

 監督の交代劇や本国で興行的にコケてしまった事などマイナスの話題が先行している印象のシリーズ最新作『ハン・ソロ』。シリーズの人気キャラクターであるハン・ソロと仲間たちの若き日を描くスピン・オフ。監督はコーマン・スクール出身の手堅い職人監督ロン・ハワード。悪党どもがお宝を巡って騙し合い、最後は師弟対決、という何のことはない宇宙を舞台にしたマカロニウエスタン、なのであった。今回は鬱陶しい肉親ネタはなし。しかもシリーズを不自由なものにしている最大の原因と思われる「フォース」案件が全然絡まないというのが清々しい。『スター・ウォーズ』の紹介記事を見て、「スペ・オペだ!」と期待に胸を膨らませていた小学生の頃の自分が見たかったのはまさにこういう映画ではなかったか。という訳で、ニコニコ楽しめたんだけど、劇場を出たらもうすっかりさっぱり忘れ去ってしまった。何この印象の薄さは。 

(『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』 SOLO: A STAR WARS STORY 監督/ロン・ハワード 脚本/ジョン・カスダン、ローレンス・カスダン 撮影/ブラッドフォード・ヤング 音楽/ジョン・パウエル 出演/オールデン・エアエンライクウディ・ハレルソンエミリア・クラークドナルド・グローヴァータンディ・ニュートンポール・ベタニー 2048年 135分 アメリカ)


ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー オフィシャルガイド

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー オフィシャルガイド



ロボコップ』(ジョゼ・パジーリャ) 

 『ロボコップ』リメイク版。バーホーヴェンの激烈さは望むべくもないが、これはこれで意外に楽しめた。機械化され人間の心を失った主人公が最後に人間の名を名乗るバーホーヴェン版に対し、今回はずっと心は人間のままで機械の身体に戸惑うという展開。家族のウエイトもオリジナルより大きくなっている。感情移入のし易さでは今回の方が上だろうが、やはりオリジナルの方がインパクトは上だったなあ。オリジナルの精神を引き継いで、反アメリカ、極右に対する皮肉が織り込まれているのは面白いと思った。エンディングではクラッシュの曲が流れる。 

(『ロボコップ』 RoboCop 監督/ジョゼ・パジーリャ 脚本/ジョシュア・ゼトゥマー 撮影/ルラ・カルバーリョ音楽/ペドロ・ブロンフマン 出演/ジョエル・キナマンゲイリー・オールドマンマイケル・キートンアビー・コーニッシュ 2014年 117分 アメリカ)




ジュラシック・ワールド/炎の王国』(J・A・バヨナ) 

 スピルバーグ提供のジュラシック・シリーズ最新作。お話は前作『ジュラシック・ワールド』の続き。テーマパーク「ジュラシック・ワールド」が放棄された後、野生化した恐竜たちが暮らす島で火山の活動が活発化し、大噴火で恐竜絶滅の危機が迫る。主人公たちが島に戻り、恐竜救出作戦を展開するのが前半。前作を引き継いだ冒険活劇のタッチが楽しく、恐竜が大群で全力疾走してくる中を逃げ回るというバスター・キートンばりのスラップスティックな見せ場もある。

 救出された恐竜たちがとある場所に移送されての後半は、何とびっくりのホラー映画タッチに転調する。これがなかなか良い。巨大な洋館の中を恐竜たちが跳梁跋扈し、少女の寝室に恐竜が忍び込む場面など子供の夢想の具現化のようで印象に残った。今回も「愚かな人間たちのせいで恐竜たちが暴走し主人公たちが逃げ回る」という毎度お馴染みのストーリーなんだけど、繊細な演出が粗筋を超えた豊かなイメージをもたらした好例ではないだろうか。次回はいよいよ「怪獣映画」へと大きく舵を切ることを期待させるエンディングも面白い。もし次回作が作られなかったら、あんな無責任な終わりもないかもしれんが。

(『ジュラシック・ワールド/炎の王国』 JURASSIC WORLD: FALLEN KINGDOM 監督/J・A・バヨナ 脚本/デレク・コノリー、コリン・トレヴォロウ 撮影/オスカル・ファウラ 音楽/マイケル・ジアッキノ 出演/クリス・プラットブライス・ダラス・ハワードジャスティス・スミス、ダニエラ・ピネダ、ジェフ・ゴールドブラムジェームズ・クロムウェルジェラルディン・チャップリン 2018年 128分 アメリカ)


ジュラシック・ワールド/炎の王国 (小学館文庫)

ジュラシック・ワールド/炎の王国 (小学館文庫)


 この項続く。