『マニラ・マニエラ』発売中止騒動直後に、急遽レコーディングされたのが、『青空百景』(1982年9月リリース)。実験的な『マニラ・マニエラ』の反動なのか、「このくらい簡単に出来るわい」という開き直りなのか、(ムーンライダーズにしては)ヌケの良いポップな曲が並んでいる。80年代に知り合ったライダーズ・ファンの中では、このアルバムが一番好きという人が多かった。
収録曲は、
M-1.「僕はスーパーフライ」(作詞・作曲/鈴木慶一)
M-2.「青空のマリー」(作詞/佐伯健三・ムーンライダーズ 作曲/白井良明)
M-3.「霧の10㎡」(作詞・作曲/鈴木博文)
M-4.「真夜中の玉子」(作詞/鈴木博文 作曲/鈴木慶一・鈴木博文)
M-5.「トンピクレンッ子」(作詞/白井良明 作曲/白井良明・ムーンライダーズ)
M-6.「二十世紀鋼鉄の男」(作詞/橿渕哲郎 作曲/橿渕哲郎・ムーンライダーズ)
M-7.「アケガラス」(作詞/鈴木博文 作曲/岡田徹)
M-8.「O.K.パ・ド・ドゥ」(作詞/橿渕哲郎 作曲/岡田徹・橿渕哲郎・鈴木慶一)
M-9.「物は壊れる、人は死ぬ 三つ数えて、眼をつぶれ」(作詞/鈴木慶一 作曲/岡田徹・ムーンライダーズ)
M-10.「くれない埠頭」(作詞・作曲/鈴木博文)
(アナログ盤では、M-1〜5がSIDE A、M-6〜10がSIDE B)
アルバム・ジャケットは、抜けるような青空に微笑むメンバーたち。しかしそれがタイルに描かれた偽の青空であるように、明るくポップなサウンドの裏には憂いや毒気が隠されている。
M-1は「スーパーフライ」ったってカーティス・メイフィールドじゃない。ホントにハエの歌だから恐れ入る。この曲はシングル・カットされCMソング(ミノルタカメラ)に使われてたはずで、それにこの歌詞ぶつけるってのは・・・。ちなみに慶一氏はこの曲の詩作に「ブライアン・デ・パルマの手法を持ち込みたかった」と発言している。遠景が映っていて急激に画面手前のフクロウにピントが合ったりするという、そういう奥行きを出したかったと。『ミッドナイトクロス』でトラボルタが深夜に状況音を録音している場面を想起すると分かりやすい。M-2、M-10はライヴでもお馴染みの切ない名曲。ゴドレイ&クレームの「Snack Attack」を髣髴とさせるM-4「真夜中の玉子」、ファンタジックなM-6「二十世紀鋼鉄の男」も可愛らしくて好きだなあ。
個人的なベスト・トラックは、本作の中でひときわ異彩を放つM-9「物は壊れる、人は死ぬ 三つ数えて、眼をつぶれ」だ。こんな曲を作れるのは『マニラ・マニエラ』で実験を尽くしたライダーズならではだろう。「物は壊れる、人は死ぬ」「後は不条理があるだけ」・・・。そうかもしれない。彼らはこの曲の諦観を胸に秘め、それでも俺たちには何が出来るのだろうと探求を続けてきたのだと思う。
- アーティスト: ムーンライダーズ
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 1995/12/16
- メディア: CD
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