CANYON/T.E.N.T.レーベルに移籍してリリースされたムーンライダーズ9枚目のアルバム『アニマル・インデックス ANIMAL INDEX』(1985年10月リリース)。外部プロデューサーの参加でストレスが多かった前作の反動で、今回は慶一氏がメイン・プロデュースを務め、メンバーの個人作業で作られたベーシック・トラックを持ち寄ったのだという。メンバー全員が顔を合わせたのはアルバム・タイトルを決める時だけだったという話も。ところが、全体に統一感があってどこをどう切ってもライダーズというサウンドに仕上がっている。ファンの間でも人気の高いアルバムだ。
収録曲は、
M-1.「悲しいしらせ」(作詞・作曲/鈴木慶一)
M-2.「犬にインタビュー」(作詞/佐伯健三・白井良明 作曲/白井良明)
M-3.「ウルフはウルフ」(作詞・作曲/鈴木博文)
M-4.「羊のトライアングル」(作詞/佐伯健三 作曲/岡田徹)
M-5.「さなぎ」(作詞・作曲/かしぶち哲郎)
M-6.「Acid Moonlight」(作曲/武川雅寛)
M-7.「HEAVY FLIGHT」(作詞/佐伯健三 作曲/白井良明)
M-8.「夢が見れる機械が欲しい」(作詞/鈴木慶一 作曲/岡田徹)
M-9.「Frou Frou」(作詞・作曲/かしぶち哲郎)
M-10.「駅は今、朝の中」(作詞・作曲/鈴木博文)
M-11.「僕は走って灰になる」(作詞/鈴木博文 作曲/武川雅寛)
M-12.「歩いて、車で、スプートニクで」(作詞・作曲/鈴木慶一)
(アナログ盤では、M-1〜6までがSIDE A、M-7〜12までがSIDE B)
躁状態の次回作『DON'T TRUST OVER THIRTY』に対して、鬱の『アニマル・インデックス ANIMAL INDEX』というか。鬱って言うとアレだけど、妙な翳りがアルバム全編を覆っている。最初はその内向的な雰囲気がちょっと苦手だったんだけど、聴きこむ内に好きになったアルバムだ。
M-1〜M-5(アナログ盤A面)は、アルバム・タイトル通り動物をモチーフとした曲が続く。M-1は?と言えば、同年に亡くなったたこ八郎の追悼ソングなのだという。武川氏のヴァイオリンによるインストM-6「Acid Moonlight」を挟んで、M-7「HEAVY FLIGHT」は同年に日航機事故で亡くなった坂本九の追悼ソング。続くM-8「夢が見れる機械が欲しい」の歌詞は凄い。「夜になって 寒気がして」という辺りが特に。文字通り「夢を見る機械」が登場する映画『夢の涯てまでも』(ヴィム・ヴェンダース)が公開されるのは7年後の1992年だ。かしぶち氏のM-9「Frou Frou」は、30周年記念コンサートでも冒頭を飾った(ライダーズにしては珍しい)アッパーな曲。別れの情景を歌う博文氏のM-10「駅は今、朝の中」のロマンティシズム。個人的なベスト・トラックは最後の2曲。M-11「僕は走って灰になる」からM-12「歩いて、車で、スプートニクで」への流れは何度聴いても素晴らしい。
ちなみに本作のメンバー写真は、ライダーズ史上一番格好いいスチールだと思います。
1986年3月には『ANIMAL INDEX』のツアー映像を基にした『ドリーム・マテリアライザー DREAM MATERIALIZER』がリリースされている。新たなスタジオ・ライヴとイメージ映像を加え、妙なエフェクトで加工しまくって実験映画みたいな仕上がりになっている。MTVが盛り上がっている80年代半ばなので、一味違ったことをやってやろうというメンバーの気合が感じられる。個人的には、普通のライヴ映像をもっと見たかったなあという気もするが。カーズの「ユー・マイト・シンク」よろしく小さい慶一氏がトップレスの女性の周りを飛び回る「Frou Frou」には笑った。「犬にインタビュー」のスタジオ・ライヴは最高にカッコいい。
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