今年見た映画で、まだブログに記載していなかったものについて、簡単に感想を書き記しておきます。なかなか劇場に足を運ぶことが出来ず、ほとんどがTV放映やレンタルで鑑賞したものです。
『栄光のル・マン』 (リー・H・カッツィン) 1971年 アメリカ
カーレースに情熱を注いだスティーヴ・マックィーン自らのプロデュース作品。ル・マン24時間耐久レースを迫真のドキュメンタリー・タッチで描いています。華々しくショーアップされたカーレース映画ではなくて、ひたすらにストイックな印象のシブい映画でした。レース場面はBGMなしで描き(息詰まるような臨場感が素晴らしい)、それ以外の場面で息抜きのようにミシェル・ルグランの美メロが流れるのが良かったなあ。ラストシーンでマックィーン自らは一歩退いてみせるあたりに、本物のカーレーサーたちへの深いリスペクトが感じられます。
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『ホビット 思いがけない冒険』 (ピーター・ジャクソン) 2012年 ニュージーランド・アメリカ
『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の前日譚にあたり、ホビット族の青年ビルボ・バギンズの冒険を描く新たな三部作の一作目。主演陣がいささか地味(何しろ主演は『銀河ヒッチハイクガイド』のマーティン・フリーマン)なので、前シリーズのイメージを踏襲したポスターを見た時には、こりゃまるでヴィデオスルーでレンタルされるパチもんのDVDジャケットみたいだなあと。勿論、本編はそんな安っぽさとは無縁の素晴らしい出来でした。俳優の顔つき身のこなし、多様な種族の生活様式を反映した美術、激烈なアクション、と大画面仕様の画面作りはさすがピーター・ジャクソン。前三部作の主要キャラクターが要所に顔を見せるのもお楽しみのひとつ。一番驚いたのは魔法使いサルマン演じるクリストファー・リーの堂々たる風格でした。1922年生まれというから撮影当時すでに90歳近い高齢だったはず。
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『恐怖と欲望』 (スタンリー・キューブリック) 1953年 アメリカ
巨匠キューブリック監督の劇場デビュー作。62分の中篇で、キューブリック自身仕上がりに満足できず封印していたという幻の作品が日本公開されました。飛行機が落下して敵陣の森に取り残された4人の兵士たちが、筏をつくって川を下り味方の陣地へと脱出しようとするが・・・というお話。史劇、ホラー、SF、犯罪映画、メロドラマと、寡作ながら様々なジャンルを手掛けたキューブリックですが、戦争映画だけは3本(本作、『突撃』『フルメタルジャケット』)も撮っています。お得意の狂気というテーマへの踏み込み、元々スチールカメラマンとしてキャリアをスタートさせたキューブリックが自ら撮影を担当していることも含め、低予算の小品ながら重要な位置付けの作品だと思います。
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『アウトロー』 (クリストファー・マッカリー) 2012年 アメリカ
トム・クルーズが『M:I』に続いてシリーズ化を狙っているという本作、とても大スター主演の最新作とは思えぬ小ぢんまりとした規模の映画でありました。主人公は寡黙な流れ者、終盤ではヒロインが人質になって、クライマックスは採石場での銃撃戦(と格闘)・・・という、いったいいつの映画かという感じ。TVの吹替洋画劇場(ブロンソン主演とか)でこんな雰囲気の映画いっぱい見たなあと。個人的にはそんな程よい小ささがとても好ましく感じられました。監督は隠れた逸品『誘拐犯』(2000年)のクリストファー・マッカリー。『誘拐犯』ではジェームズ・カーン、そして今回はロバート・デュバルが助っ人として登場。『ゴッドファーザー』からペキンパーの『キラーエリート』まで70年代に何度も共演したこの二人を引っ張り出してくる辺りに監督の趣味がうかがえます。要所のアクションも引き締まっていて見事。こういう作品に出会うとホッとしますね。荒んだ表情で凄みを利かせる悪役は何とヴェルナー・ヘルツォーク監督!
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制御不能に陥った旅客機を見事に操り大惨事を免れたベテランパイロット(デンゼル・ワシントン)は、多くの命を救ったヒーローとして賞賛されるが、検査で血中からアルコールが検出されてしまい・・・というお話。清濁併せ持つ苦々しい人間ドラマで、実に見応えがありました。主人公は決して共感出来るようなキャラクターではないものの、終盤で決断を迫られる場面には息詰まるような緊張感があります。主人公の造型には、どこの業界にもこういう綱渡りのような生き方で成功を収めている人物っているんだなあと妙なリアリティがありました。病院の非常階段の踊り場で主人公と癌患者が喫煙しながら語り合う場面、主人公が家中の酒瓶を捨てる場面、ホテルの隣室で酒を発見してしまう場面等々、印象的な場面も多数。依存症の生理を巧みに描いているのも見所で、ビリー・ワイルダーの『失われた週末』、バーベット・シュローダーの『バーフライ』と3本立てすると面白いかも。
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1979年にイランで起きたアメリカ大使館人質事件を題材としたサスペンス映画。カナダ大使邸に匿われた6人をイランから救出するため、CIAは映画のロケハンを装って入国するが・・・というお話。正統派のサスペンス演出がなかなかいい感じ。CIAがでっち上げた架空の映画は『スターウォーズ』風(というか『フラッシュゴードン』風)のSF映画。この辺、いくらでもオタクっぽい味付けが出来そうなんだけど、マニアックになり過ぎずサラリと描いているのがいい塩梅でありました。70年代の設定なので、冒頭のワーナーのロゴが昔のデザイン(『時計じかけのオレンジ』や『ダーティハリー』なんかでお馴染みの丸っこいやつ)。長身の俳優兼監督として頭角を現してきたベン・ アフレック。イーストウッドの後継者になれるかな?『パラサイト』のゴスっ娘クレア・デュバルが野暮ったいメイクとジェーン・フォンダ風の眼鏡で見事な70年代顔を見せてくれます。
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