Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ベイビー・ドライバー』(エドガー・ライト)


 昨年劇場で見た映画の感想です。エドガー・ライト監督、アンセル・エルゴート主演『ベイビー・ドライバー』。


 エドガー・ライト監督が放った会心の一打!『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2007年)、『スコット・ピルグリムvs邪悪な元カレ軍団』(2010年)、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013年)、と常に僕らの側の映画を撮り続けてきたエドガー・ライト。本作は僕らの側にちゃんといながら、一見さんでも(映画マニアでなくとも)存分に楽しめる映画になっている。


 主人公「ベイビー」(若い頃のアンディ・パートリッジみたいな顔つきのアンセル・エルゴート)は犯罪者の逃亡を手助けするゲッタウェイ・ドライバー。交通事故の後遺症の耳鳴りを紛らわすために、常にi-podで音楽を聴き続けている。主人公の心情・行動とダイレクトに繋がった楽曲の数々は単なるBGMを超えた使用法で、まるでミュージカルのごとく振付けられた映像と楽曲の一体感はこれまでにない面白さだ。選曲のバラエティも特筆に価する(そして、またしてもクイーンが・・・)。エドガー・ライトの得意技である編集技(岡本喜八ばりのアクション繋ぎ)も存分に発揮されていて、痛快この上ない。手垢のついたカーアクション映画、泥棒映画、というジャンルにおいてこれほどの新鮮さを生み出せるというのは本当に驚きだ。必見。


(『ベイビー・ドライバー』 BABY DRIVER 監督・脚本/エドガー・ライト 撮影/ビル・ポープ 音楽/スティーヴン・プライス 出演/アンセル・エルゴートケヴィン・スペイシーリリー・ジェームズエイザ・ゴンザレスジョン・ハムジェイミー・フォックスジョン・バーンサル 2017年 113分 アメリカ)