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昨年見た映画の感想です。黒沢清監督『散歩する侵略者』。『岸辺の旅』、『クリーピー』、劇場では見逃したけれど『ダゲレオタイプの女』、と毎年順調に黒沢清監督の新作が見れて嬉しい。
今回は久々にエンターテイメント路線に振った印象で、メジャーな俳優たち、ブラックユーモア満載で笑える会話、迫力のアクションなど見所は多い。結末は●●が地球を救う、なんて黒沢監督らしからぬ直球な結末だし、今までになくアメリカ映画的な明快さ・楽天性を実践しているようにも見えた。メインに据えられているのは長澤まさみと松田龍平演じる夫婦で、ここ数年の黒沢映画で重要な主題となっている夫婦関係の修復がここでもやはり主要なエピソードとして展開する。かように(黒沢映画にしては)間口が広く、黒沢作品に馴染みのない観客にもアピールする要素は多いと思う。
お話は宇宙人が地球人を理解する為に「概念」を集めて回るというもので、クライマックスにはちゃんと地球侵略のスペクタクルもある。「概念」を奪われた人間が開放的になるという描写があったりして、サイコキラーが宇宙人に変わった『キュアCURE』という感じも。
『散歩する侵略者』のスピンオフ企画として製作されたのがTVシリーズ『予兆 散歩する侵略者』(全5話)。何しろ「男だったら侵略SF」の名言を残した高橋洋が脚本である。黒沢監督とは『復讐 運命の訪問者』『蛇の道』というハード路線の傑作を残した名コンビだからして、これはもうハズレ無しだ。映画版が(原作舞台のテイストなのか)ブラックユーモアが盛り込まれた作風だったのに比べ、こちらは黒沢清ならではのホラーテイストが全開になっている。とてもTVムービーとは思えない濃厚な映像と演出にはシビれた。冒頭の暗い室内、風でゆらゆら揺れるカーテン、夏帆の不安げな表情だけでもう黒沢清の世界である。加えて「家族の概念を抜き取られた娘には、父親が幽霊に見える」という設定を本気で追及する辺りは高橋脚本の真骨頂。諏訪太郎や大杉漣らVシネ時代の常連の出演も嬉しかった。個人的な好みからすると『予兆』の方が凄いかもと思ったなあ。
(『散歩する侵略者』 監督/黒沢清 脚本/田中幸子、黒沢清 撮影/芦澤明子 音楽/林祐介 原作/前川知大 出演/長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、高杉真宙、恒松祐里、笹野高史、前田敦子、光石研、児嶋一哉、東出昌大 2017年 129分 日本)
- 作者: 前川知大
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